『東京貧困女子。』(中村淳彦 著)

 読み終わった後に、かけたことのないサングラスをかけたような気持ちにさせてくれる本がある。本を読んだ後から、普段見えている町の景色も色も変わって見えてくる本。この本はまさにそれであり、今、この本を読めたことに感謝している。

 僕は今、ある大学で非常勤講師を1年間やっている。毎週やっているわけだが、僕の授業を受けている学生の数は200人以上。この本を読んで思う。僕が今からここに書くことで、嫌悪感を抱く学生や大学関係者もいると思うが、勇気を持って言おう。この本を読んで思った。僕の授業に出てくれている200人以上の学生の中にも、大学に通うために体を張った仕事をしている人がいるのかもしれない、と。この僕の文章を読んで色々思う人がいるならば、一度、この本を読んでもらってから話したい。

 本の前半に出てくる大学奨学金制度の闇。「奨学金」と言えば聞こえはいいが、今の日本で、大学奨学金というものが、年利上限3%で、奨学金とは名ばかりの利子で利益をあげる金融ビジネスとなっているという現実。奨学金っていつからこんなことになってたの? 恐怖すら感じる。

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 大学に行きたいがために、奨学金を借りて、それを返すために、風俗などで働き、体で返す。

 それは昼のドキュメンタリー番組などに出てくる、ごく稀な人ではない。大学に通うための奨学金の返済で風俗で働く女性が少数ではなく、この東京では結構な数、いるのだ。