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2019/06/14

安倍晋三 首相
「積立金の運用は大きくプラスになっておりますし、マクロ経済スライドも発動されましたから、言わば『
100年安心』ということが確保された」
テレ朝news 6月10日

「キャッシュレス決済」体験をする安倍首相 ©文藝春秋

 こちらも参議院決算委員会での発言。「マクロ経済スライド」とは、現役世代の減少や平均余命の伸びにあわせて、自動的に年金水準を引き下げていくという仕組み。年金給付額を減らすから年金制度は破綻することがないので「100年安心」というわけだ。

 とはいえ、積立金の運用は心許ない。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による公的年金の運用は、2018年10月~12月の3ヵ月間だけで14兆円規模の損失となった。年金資産の市場での運用を始めた01年度以降の累積の黒字額は56兆円超、運用を見直した14年10月以降でも15.4兆円近くの黒字を維持しているが、「『100年安心』ということが確保された」とは言い切れないだろう。

 だが、安倍首相はあくまでも「100年安心」と繰り返している。年金制度の「100年安心」が人々の100年の人生が「安心」だと思わせているようでもある。

「年金制度は『負のスパイラル』」08年に麻生氏が言っていたこと

麻生太郎 副首相兼財務相
「政府がどんなに『
100年安心』と謳っても、自戒を込めて言えば、もはや信用する人は誰もいないのだ。年金制度はまさに『負のスパイラル』に陥っている」
『中央公論』2008年3月号

G20のシンポジウムで耳に手を当てる麻生太郎氏 ©時事通信社

 ちなみに、これは麻生氏が首相になる直前に記した文章。このときのほうがよっぽど真摯に年金問題に取り組もうとしていたように見える。

麻生太郎 副首相兼財務相
「世間に著しい不安と誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なりますので、正式な報告書としては受け取らない」

FNN PRIME 6月11日

 6月11日、麻生氏は異例の発表を行った。金融庁の報告書が「世間に著しい不安と誤解」を与えたので「受け取らない」というのだ。

 報告書は、そもそも金融相(麻生氏)の諮問を受けて議論が始まったもので、大学教授や金融機関の代表者ら21人の委員が12回にわたって議論を重ねた。通常はこの後、金融審議会の総会で了承され、担当大臣に報告されるが、今回はこの手続きの前だったため、「公式な文書ではない」としたのだ。

 フジテレビの風間晋解説委員は「政府にとって、不都合な真実が明るみに出てしまった報告書」と表現し、「これはちょっとまずいということで、報告書はなかったことにしようとしていますけど、この状況は隠せないわけですよね」とコメントした(FNN PRIME 6月11日)。

 麻生氏の受け取り拒否に対して、野党は一斉に反発。立憲民主党の枝野幸男代表は「選挙前では都合が悪いから受け取らない、撤回しろと。あ然とせざるを得ない」、国民民主党の玉木雄一郎代表は「不都合なことをなきものにしていたら、ますます老後の暮らしが不安になっていく」とそれぞれ批判している(FNN PRIME 6月12日)。