厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。(前編より続く)

※「週刊文春」2012年7月12日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

「性の老化」を食い止める椎茸、キクラゲ、ウナギ

「私の周りでは60代、70代で子供をつくった男性がいます。その人たちは生まれつき腎気が他の人より多かったり、老いても経脈(気や血など代謝物質の通り道)が滑らかで腎気が充実している。また、養生に精通した人は、高齢でも子供をつくることができます」

 山本文郎さんは再婚で生活習慣を変えて、食生活を強く意識するようになった。このように、弱くなった腎を後天的に復活させて、老化を遅らせることができるという。

 例えば、腎気を補う働きのある食べ物がある。山芋、キャベツ、椎茸、キクラゲ、ニラ、栗、くるみ、ゴマ、黒豆、あわび、イカ、海老、ウナギ、海藻、自然塩、肉類などがそうだ。

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「もちろん、旬の活きのいいものをバランスよく食べることが第一です。少量の酒は、血流をよくして痴呆を防ぐ。また、血流を良い状態に保つ意味で、小まめに体を動かし筋肉を養うことも必要です」(櫻井氏)

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 さらに、紀元前から中国では「不老不死」や「若返り」が研究されてきた結果、漢方薬に「補腎剤」というものがある。腎虚の症状に応じて、八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸などが処方される。

超音波で「射精」を観察してみると…

 限界年齢を解明するうえで、西洋医学の観点からも見てみたい。岡山県の川崎医科大学泌尿器科の永井敦教授は、変わった実験をしたことがある。

 03年、永井教授は超音波装置を使って前立腺治療のための画像を見ながら、ふと思いついたことがある。

“超音波装置を使えば、射精のメカニズムを見られるかもしれない”

 さっそく永井教授ら研究チームは実験を行った。29歳の健康な男性の肛門に、妊婦の膣に入れて胎内を見る超音波装置を入れ、その格好でマスターベーションをしてもらった。超音波は肛門に接する臓器すべてを映し出す。そして、勃起のプロセスを世界で初めて映像として捉えたのだ。

 今回、取材班はその映像をパソコン上で見せてもらった。まず、前立腺の血流がよく流れ始めた。前立腺の血流が悪いと前立腺肥大症になる。この血液は、陰茎の毛細血管にも送り込まれて、血管に血をみなぎらせる。つまり、勃起するのだ。

 すると、間を置かずに、精嚢から精子がみるみると集まりだしたかと思うと、レーザービームのようにものすごい勢いで尿道に向かって直線的に突き抜けていった。