先行き不透明な時代、正解がない時代に子どもたちをどう育てればいいのか。
『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』はモンテッソーリ教育、シュタイナー教育など、世界を代表する7つの進歩的教育法を紹介している。
子どもたちの想像力を引き出すというシュタイナー教育を実践する小学校ではどんな教育が行われているのだろうか。神奈川県相模原市の小学校の1日に密着した。
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ドイツを中心に活躍した思想家ルドルフ・シュタイナーが、自然科学と精神科学を統合し人智学(アントロポゾフィー)を確立。1919 年ドイツに「自由ヴァルドルフ学校」を開校し人智学の知見を活かした教育を実践したのがはじまりです。「自由への教育」を標榜しています。
人間は、「身体・心・精神」の3要素からできており、「7年周期」で成長するとシュタイナーは考えました。0~7歳は身体を育てる時期。7~14歳には心を育て、14~21歳には思考を育てる。また人間には、「憂鬱質」「粘液質」「多血質」「胆汁質」4つの「気質」がある。教育そのものを芸術ととらえ「教育芸術」と呼びました。
俳優の斎藤工さんや村上虹郎さんがシュタイナー教育出身者であることが有名です。海外では、女優のサンドラ・ブロックや児童文学作家のミヒャエル・エンデほか、ポルシェデザイン創業者、ライカ社社主、元アメリカン・エキスプレスCEOなどを輩出しています。
どんな教育が行われているのか。神奈川県相模原市にある、シュタイナー教育を実践する私立小中高一貫校「シュタイナー学園」を訪れました。文部科学省に正式に認められている学校です。
2、3週間、1つの教科だけに集中する「エポック授業」
小学5年生の「エポック授業」を見学しました。
エポック授業とは、国語・算数・理科・社会のうち1つの教科の内容を、毎日105分間、2~3週連続して学ぶ集中授業です。毎日細切れに1時間ずつ国語や算数の授業をするのではなく、ある期間は理科なら理科、社会なら社会を、徹底して集中的に学びます。
1つの教科に浸りきったら、また別の教科にとりくみます。その間に、前に習ったことは忘れてしまうかもしれません。それでいいのです。学んだことは、一旦忘れることによって、新しい段階の記憶に変わるからです。
エポック授業は、単なる座学ではありません。身体を使うリズム活動と感覚や感情を動員する体験的な学びを理論的な学びと融合させた、芸術性に富んだ総合的な学びの時間です。
子どもたちのために選び抜いた教材を用いて、それぞれの先生が独自に内容を考案します。おなじ学年でも先生によって学ぶ内容や手順がまったく異なることも珍しくありません。教師の裁量が大きいのです。エポック授業は担任が行います。
午前中のもっとも集中力が高まる時間にこのエポック授業を行うことで、1日の活動に動と静のメリハリが生まれます。シュタイナー教育を実践する学校の土台ともいえる授業です。