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「ピラミッドの石の大きさは?」たちまち引き込まれる授業

「昨日のお話を思い出してみてください」

 暗転した舞台のうえでスポットライトをあてられた女優が、観客にそっと語りかけるように、先生が話し始めます。たったその一言を、まなざし、身ぶり手ぶり、声のトーン、全身全霊で伝えようとしています。子どもたちもたちまち引きこまれます。「これがシュタイナー教育か」。この瞬間だけで、私は感動を覚えました。

「オシリスの棺がナイル川に流されました。イシスが夢をみて、神殿の柱のなかにオシリスの棺があることを知り、イシスがその国にいくと、ちょうど王様の子どもが大病に罹っており……」

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 エジプトに伝わる神話について学んでいるようです。黒板には、ピラミッドやナイル川、神話のシーンなどの絵が芸術的なタッチで描かれています。これを描くのに何時間かかったことでしょう。

 話題はピラミッドに移ります。

「ピラミッドをうえからみたらどんな形だかわかりますか?」

 子どもたちはそれぞれに自分の考えを述べます。

「そう、真四角ですね。エジプトのギザというところには『ギザの3大ピラミッド』と呼ばれるピラミッドがあります。いちばん大きいものはクフ王の墓だといわれています。どれくらいの高さがあると思いますか? メソポタミアの宮殿は高さ90メートルでしたね」

エポック授業の内容に合わせて、担任が芸術的な板書を用意する。

 また子どもたちはそれぞれに自分の考えを述べます。

「正解は147メートルです。ではピラミッドの1つひとつの石の大きさはどれくらいだと思いますか?」

 子どもたちの反応をたしかめながら、ひとりの女の子を指名して、黒板の前に立たせ、尋ねます。

「身長は何センチですか?」
「149センチです」
「1つひとつの石の大きさはだいたい150センチくらいです」

 子どもたちの頭のなかに、実物大のピラミッドの石が思い浮かんだことでしょう。