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「ZOZO前澤社長にも力を貸してほしい」 日本からお寺がどんどん減っていく

鵜飼秀徳(ジャーナリスト、浄土宗正覚寺副住職)――クローズアップ

2019/07/12
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「民間企業とお寺をつなぎ、お寺に人とお金を呼び込みたい」

 ただし、お寺を継いだから安泰というわけではない。現住職の父親で32代目となる古刹だが、やはり経営は厳しく、文筆業や大学講師で生計を立てる。

「寺院の維持には少なくとも檀家が200軒必要なのに、うちは120軒。まさに消滅の危機ですよ」と苦笑する。

 最新刊『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』(文春新書)では、廃仏毀釈の現場を歩き、知られざる史実を掘り起こした。奈良では、天平時代の仏像が薪に、京都では、破壊された寺院の仏具類が四条大橋の材料になったというから驚きだ。

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「当時、9万カ寺あった寺院が、わずか数年で半減した。お寺が消えるという意味では、今も状況は同じです。そうは言っても、心のよすがとなる、地域にとって必要なお寺は残すべきだと思うのです。どうすればいいか自分なりに模索して、『良いお寺研究会』を立ち上げました。民間企業とお寺をつなぎ、お寺に人とお金を呼び込みたい。ZOZOの前澤友作社長など、富裕層の方々も力を貸してほしいですね。月に行くよりも後世に残る偉業になりますよ(笑)」

うかいひでのり/1974年京都市生まれ。成城大学卒業。新聞社、出版社勤務を経て、2018年ジャーナリストとして独立。主著に『寺院消滅』『ペットと葬式』など。京都市右京区にある浄土宗正覚寺の副住職も務める。一般社団法人「良いお寺研究会」代表理事。東京農業大学、佛教大学非常勤講師。

INFORMATION

『良いお寺研究会』
https://www.yoiotera.org/

「ZOZO前澤社長にも力を貸してほしい」 日本からお寺がどんどん減っていく

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