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 そもそも、この解決法であれば、どうしてもっと早くに出さなかったのか。それに、国民ファースト(優先)、被害者中心主義を謳っておきながら、事前に元徴用工側との話し合いもなかったうえに、被害者が訴えていた不幸な行為について日本企業が責任を認めて謝罪することがすっぽり抜けている。あまりにもお粗末です」

 日本が仲裁委員会の設置を韓国に正式に申請し、回答を求めていたのは周知のとおり。仲裁委員会の設置は1965年の「日韓請求権協定」で両国の間に協定の解釈などで紛争が起きた場合の解決策として定められているもので、回答期限は30日以内。そのため、期限に当たる6月18日までの韓国政府の動きが注目されたが、その日、韓国政府は「慎重に対応している」と従来の立場を繰り返し、見送った。

 ところが、その翌日、今度は「日本が財団設立に応じれば仲裁委員会設置に応じる」という死球に近い変化球を投げてきた。

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文在寅韓国大統領 ©Getty Images

元徴用工支援者らからも仲裁委員会設置を支持する声が

しかも、この「財団設立案」には元徴用工側からも「事前に話し合いもなかった」と当惑する声がでている。そもそも、仲裁委員会を巡っては、元徴用工を支援する側からは支持する意見もあった。

 たとえば、元徴用工の代理人のひとり、イ・サンガプ弁護士は進歩系のハンギョレ新聞のインタビュー(6月12日)で、「徴用問題、政府が被害者中心主義を守りつつ、日本との交渉にでなければ」と話していて、「(歴史問題について過去、政府が関与して失敗したため、韓国政府が交渉に憂慮しているようだとした上で)政府は外交交渉を怖れる必要はない。交渉過程を被害者と共有しながら解決していけばいい」と仲裁委員会設置に前向きな姿勢をみせていた。

 そして、「この際、これまで請求権協定で解決された、されないと論争が起きていた問題について、たとえば、慰安婦問題、原爆被害者問題、サハリン滞留問題などを包括的に解決しよう、こう逆に提案もできる」と仲裁委員会では元徴用工問題に限らない範囲まで発展させようという意図も示唆していた。

 昨年10月30日の裁判の原告の一人、李春植氏(95歳)の代理人を務めるイム・ジェソン弁護士もまた、「強制動員した日本企業と被害者が和解できるよう政府が外交力を発揮しなければ」(ソウル新聞6月14日)と韓国政府を批判。そして、「李春植さんは年内の解決を望んでおり、被害者は自分たちを動員していった企業の謝罪を望んでいる」と訴えていた。さらに、日本での訴訟を支援している日本人への謝辞とともに、「沈黙してきた被害者が自身の声をあげた時に壊れるような関係ならばその関係自体が問題だ」と日韓関係悪化の原因を徴用工問題に置くことに異議を唱えてもいた。

 仲裁委員会設置を巡っては、むしろ歯切れが悪かったのは日本研究者などの“知日派”だった。