厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。
※「週刊文春」2012年8月2日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。
日本人女性はオーガズムを感じにくい?
下半身から日本が見える、というのは決して大げさな表現ではない。
『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)の著者、宋美玄氏は読者の反応に驚いていた。
「魔法のテクニックを書いたわけでもなく、ごくスタンダードなことを書いただけです」
2010年に出版した同著は、50万部を越える大ベストセラーを記録。産婦人科医であり、性科学者である宋氏が、間違った性知識をもつ20代が多いことから執筆した本だった。が、
「あれ、私、おじいさん向けに書いたんだったっけ? と驚くほど、読者ハガキは、70代、80代といった高齢の方が多く、最高では90代の方でした」
いくら長生きしても、正しい性の知識を知らない人が多いという現れだろう。男性が自分は良かれと思って満足していた性行為の陰で、悩める女性たちは女医のもとに駆け込んでいるのだ。彼女たちは、一体、何を訴えているのか。
横浜元町女性医療クリニック・LUNAの関口由紀理事長のもとに、ある日、70代の女性が訪ねてきた。女性は関口氏と話すうちに、素朴な疑問を口にした。
「世間でいうオーガズムとは、何ですか?」
性交中の絶頂期。医学的に言うならば、骨盤底筋群の強い収縮によって、全身に広がる快感である。
この70代の女性は、「とてつもなくすごいことのようだけど、この年になるまで一度も経験をしたことがない」と言う。そして、こんな本音を漏らしたのだ。
「死ぬまでに一度でいいから、そういう最高のセックスというものを体験してみたいんですが」
実は、日本人でオーガズムを経験したことのない女性は海外に比べて多い。これを「オーガズム障害」という。「感じることはできるが、いきにくかったり、いかないこと」だ。オーガズムは、子宮内膜症になりにくくなるとか、入眠作用があるというアメリカの学者チームによる研究があり、健全な生理現象である。