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source : 週刊文春 2012年8月2日号

genre : ライフ, ライフスタイル, 医療, ヘルス, 社会

前戯をしたいのに言えない夫婦

「旦那さんとは、どんなふうにやっているんですか」

 関口氏が聞き込んでいくと、この夫婦の性交の問題点が見えてきた。前戯などがまったくなく、性交のプロセスに原因があるのだ。

「これをご夫婦で見て下さい。見ることも訓練です」

 関口氏が治療用に購入してもらったのが、アメリカ製の性教育DVDだった。『ベターセックス』という3枚セットで、セックスの基本型からテクニック、体位、多彩なプレーを解説したものである。

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 すると、「見る訓練」で、拍子抜けするようなことがわかった。実は、夫も前戯をずっと長い間やってみたかったのだ。結婚以来数十年、筆を使ってクリトリスを刺激したいなど、やりたいことはあった。が、

“まさか、お前がそんなこと(前戯)をしてもらいたいと思っていたなんて”

 と誤解し、すれ違いのまま70代を迎えていたのである。つまり問題は、夫婦の関係性の深まりにあったのだ。関口氏が言う。

「セックスを深めるということが、夫婦の中の重要事になっていない例です。日本では古い世代によくあることで、文化的なことかもしれません。でも、オーガズム障害は、若い女の子にもいます。特に、パートナーを取っ替え引っ替えしている子です」

「子供は欲しいけどセックスはしたくない」

 経験豊富な女性がオーガズム障害というのは意外だが、似たような話を聞いたことがある。恋愛コラムニストの島田佳奈氏は、仕事柄、性に関する相談を受けることが多い。

「ある男性から、『26歳にして初めて彼女ができたのですが、彼女をどう扱っていいかわからない』という相談がありました」

 島田氏の話を聞いて、「ああ、草食系の童貞ですね」と私は受け流したが、次の言葉を聞いて、飲んでいたコーヒーを吹き出した。

「いえ、セックス経験は非常に豊富です。ただ、これまでは全部セフレ。携帯電話で気軽に出会って、考える前にセックスをしている。コミュニケーションは苦手で、女性とちゃんと向き合ったことがない。そういう人は多いのです」

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 当然、関係性が深まる経験はなく、性交は性欲解消の機会というわけだ。男は射精がオーガズムだからいいが、女性の場合、即物的な性交は満足を得られないばかりか、苦痛になることがある。冒頭の宋氏にはこんな相談がきているという。

「子供は欲しいけれど、夫とはできるだけセックスをしたくないと訴える女性たちがいます。セックスをしたくない夫との間に、なぜ子供が欲しいのかわかりませんが、『そんな気にはなれない』とか『できるだけ最少回数で妊娠したい』と言い、若くして人工授精を希望する人もいる。したくない人にしなさいとは言えませんが、セックスが嫌いだったり興味がない人は、本当に気持ちのいいセックスをした体験がないのでは、と思ったのです」