オンして何分で達するか
女性に苦痛をもたらす性機能障害は、4つある。局所反応障害、性的意欲障害、オーガズム障害、性交疼痛症だ。では、どうすれば気持ちのいいセックスができるようになるのか。まずは、オーガズムのメカニズムから見ていこう。
2009年、スウェーデンで開かれたWAS(世界性の健康学会)に参加した宋氏は、思わず唸らせられる研究報告を聴いた。オランダの医師が発表した、オーガズムの個人差である。
「これは、20人の女性にバイブレーターを渡し、アダルトビデオを見せながらマスターベーションをしてもらうという実験です。スイッチをオンにしてから、何分でオーガズムに達するかを計測し、グラフにして発表されました」
この“人体実験”の結果、被験者は2群に分けられた。3分以内で絶頂に達した女性と、10分かかった女性である。2つのグループの違いは何だったのか。
3分という早さでも、性的興奮には4段階のプロセスを経る。まず、興奮期だ。性交でいうと、服の上から体を触ったり、抱き合ったりというスキンシップを始めることで、体の性欲にスイッチが入る。
興奮期、高原期、オーガズム、消退期
興奮期に入って30秒ほどで「膣粘滑液」が膣壁を覆う。これがいわゆる「濡れる」という現象である。
宋氏によれば、男性は液体の量を気にするのではなく、「彼女の濡れ方を把握するのが大事」だという。
ちなみに、外国人は「濡れにくい」という症例が多く、日本人は濡れにくいという悩みは比較的少ない。
閉経で濡れにくくなった人は、ホルモン療法によって簡単に治療できる。
「エストロゲンという女性ホルモンがなくなると、骨盤の血管が細くなったり、死んだりします。エストロゲンを増やせば、膣にいく血管が増えて栄養がいき、血管から液体の成分が染み出てきます」(宋氏)
次のプロセスが、高原期である。性器が肉厚に膨らみ、男性器を挿入できるタイミングとなる。性交の開始となり、3段階目に移る。骨盤底筋群が強い収縮を始めて、高揚感は全身に広がっていく。これが、忘我の境地となるオーガズムだ。
その後、4段階目の消退期が来て、骨盤に流れ込んだ血が引いていく。オーガズムに達していないと、血液が解放されず、ひどい場合は腰痛や骨盤痛に繋がる。オーガズムは健康の証でもあるのだ。
(後編へ続く)
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