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きっかけはお客さんが持ち込んだ弱ったハヤブサ

「2005年当時は福井店に勤めていたのですが、お店にお客さんが弱ったハヤブサを保護して、持ち込んだんです。私の方も専門ではないけど、とにかく預かり、獣医師さんに診てもらって治療し、よくなったところで自然保護センターに引き渡した。保護センターが山にハヤブサを帰したんですが、この間、ずーっと面倒を見ていて、猛禽類を飼ってみたいと考えたんです。

 翌2006年、アメリカ原産の鷹、ハリスホーク(和名はモモアカノスリ)を30万円で買い、個人的に飼い始めました」

 ハリスホークは比較的飼いやすく、餌はたいていが冷凍したウズラの成鳥である。

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 吉田さんは鷹を飼ううち、鷹匠になりたいと考え始めた。左手に鷹をとまらせ、鷹に指示して大空に放つ。自分も鷹になったような気分になれそうではないか。幸い知り合いに鷹匠がいた。その人に手引きしてもらい、2009年、NPO法人日本放鷹協会(岐阜県海津市) に入会した。鷹匠には流派がある。同協会は諏訪流の放鷹術を教え、鷹匠の認定試験を実施している。

NPO法人日本放鷹協会のホームページ

 2012年、吉田さんは試験に合格し、晴れて鷹匠を名乗れるようになった。当初は起業するつもりなどなく、自分も鷹匠になって、伝統を伝えられればいいぐらいに考えていた。

 そのうち海外では飛行機などの離着陸時に鳥が衝突するバードストライクの防御に、鷹が使われていることを知った。となれば、日本でも鷹匠を生業にできる可能性があるのではないか。鷹を、鳥獣を狩るために使うのではなく、鳥獣を蹴散らして、未然に事故や被害を防ぐ。

 そうでなくとも各地の神社仏閣などではドバトの害にそうとう悩まされているらしい。日本では人気のあるところではドバトを追い払うため空気銃を使うことさえ許されていない。

 となれば、鷹の出番ではないか。鷹は自然そのものだから、環境に何一つ負荷を掛けない。これだ、と吉田さんは膝を打つ思いがした。早速、奥さんに相談すると、奥さんは意外なことに、「いいんじゃないの。鷹の本職になっていいと思うよ」と言ってくれた。