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文在寅政権が徴用工裁判で“無理筋”の「条件付き協議」を突きつけてきた理由とは

日韓関係が新たな段階に入ってきた

2019/06/26
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韓国政府要人のあまりに楽観的な発言

 結局、明らかなのは、現在の韓国政府が昨年10月に行われた「徴用工」判決以降の日韓関係を巡る状態を解決しようとして、真剣に動いてはいない、という点だ。現在の文在寅政権にとって重要なのは、自らの支持率の最大の足かせである経済問題と、停滞する北朝鮮を巡る問題である。その間で厄介な日韓関係は放置され、真剣に考慮されてこなかった。

「現在の日韓関係は最悪ではない」

「日韓間には過去にも様々な問題があった」

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「両国間の交流が進んでいる以上、ファンダメンタルは大丈夫だ」

 韓国政府側の要人が繰り返す、楽観的な発言は、彼等が事態の深刻さを理解しておらず、また事態に真剣に取り組もうとしていないことの表れである。

©iStock.com

「当事者主義」を主張する文在寅政権の不誠実

 日本政府が行った第三国による仲裁委員選定へと進む提案への回答期限は30日後。日本政府はこの後、韓国に対して国際司法裁判所への共同提訴への提案、さらには日本自身による単独提訴へと向かうだろう。韓国政府が気づくべきは、事態が植民地支配の当事者たちに対する補償を巡る問題から、法的手続きの順守に移っており、結果「責められる側」が条約による手続きを進める日本から、これを放置する韓国に変わっていることである。

 これらの日本側の提案をすべて無視すれば、日本政府は韓国政府の条約順守に関わる不誠実さを国際的に訴えていくだろう。国際司法裁判所による訴訟手続きは、当事国すべての同意なしには、開始されないが、この過程での日本政府の批判は、韓国の国際的信用に一定の影響を与える可能性がある。

 韓国、そして文在寅政権はそれでも「司法の判断だから仕方がない」という言葉を繰り返し、自らの殻に閉じこもっていくのだろうか。こうして両国の紛争が長引けば、すでに90歳を超えている植民地支配の当事者は、次々と世を去っていくことになる。それは「当事者主義」を主張する文在寅政権の主張とも明確に背馳していると思うのだが、どうだろうか。

文在寅政権が徴用工裁判で“無理筋”の「条件付き協議」を突きつけてきた理由とは

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