どこまで広がるのか、次は誰が出てくるのか。芸人たちによる反社会的勢力への「闇営業」が芸能界を揺るがしている。本人たちの認識が甘かったのはもちろんだが、所属事務所である吉本興業の対応の甘さや企業体質を問題視する声も大きい。
処分者が13人ともなれば企業の不祥事でもある
所属事務所を通さずに仕事をする闇営業で、所属の芸人らが特殊詐欺グループの忘年会に出席したことが、6月7日発売の『フライデー』(講談社)で報道された。吉本興業は、すぐさま闇営業を仲介したカラテカ・入江慎也を解雇。当初はギャラをもらっていなかったとして、雨上がり決死隊の宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号の田村亮らを厳重注意処分とした。
宮迫や田村亮はツイッターでギャラの受領を否定したが、その後の調査で、実際はギャラをもらっていたことが発覚。吉本興業は6月24日に出席者を謹慎処分とし、謝罪文を出した。ワタナベエンターテインメントも、この会に出席していたザブングルの謹慎処分を発表した。
闇営業による芸人たちの不祥事ではあるが、処分者が13人ともなれば企業の不祥事でもある。
「不祥事」といえば悪いイメージしか浮かばないだろうが、ピンチばかりではない。そのピンチをチャンスに変え、企業のイメージやレピュテーションを上げられる機会でもある。
企業イメージをリカバーできる機会だった
2011年、島田紳助さんが暴力団関係者との交際が原因で引退を表明して以降、吉本興業はコンプライアンスの徹底と反社会的勢力の排除に取り組んできたはずだった。対応次第では、会社ぐるみで徹底して取り組んでいるとアピールできる、過去にあった企業イメージをリカバーできる機会だっただろう。それなのになぜ、吉本興業はピンチをチャンスに変えることができなかったのか。
問題の経緯を、1冊の「謝罪本」とともに考えてみる。
〈謝罪しなければならないような事態がおきてしまったら、腹をくくって真摯に対処するに限る〉
入社以来35年、吉本興業の謝罪会見を取り仕切った謝罪マスター、竹中功氏は、著書『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社)でこう書いているが、“真摯な対処”という言葉が虚しくなってくる事態になってしまった。