昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/07/21

横山と高橋の苦闘で結ばれた絆

 そんな「エグい2人」には、苦闘で結ばれた絆がある。昨年、左肘の不調で6月から2軍に降格した高橋のそばにいたのが、横山だった。「遠征も行かず、ずっと寮にいて。みんなが野球をやってるのに自分は何をしてるんだろう」と、先の見えないリハビリへ気持ちの折り合いがつかない後輩を見かねた先輩が、声をかけた。

「遥人、俺見てみ? どんだけ長くリハビリやってると思う?」

 左肩にメスを入れて1年が経とうとしている男の言葉と姿勢は、落ち込む23歳に突き刺さった。「横山さんは自分よりもずっと前からリハビリをやっているのに……黙々とやられていて。自分も前を向かないといけないと思いました」。故障が癒え、1軍の先発ローテーションに定着しつつある高橋は、当時を思い返しながらしみじみと感謝する。

横山雄哉(左)と高橋遙人(右)

 だからこそ、7月5日のウエスタンリーグ・オリックス戦で425日ぶりの実戦登板を果たした横山の復帰を、誰よりも喜んだ。その日、日程の関係で1軍先発投手の練習が鳴尾浜球場で行われたため、ファームの選手たちと横山の投球を見守り「めちゃくちゃ嬉しかったです。リハビリも一緒にやってきたので」と辛い道のりを経て、ようやくたどり着いたマウンドでの姿を、しっかりと目に焼き付けた。

 そして、横山にとっても背番号29は特別な存在となった。「遥人が今、1軍で投げているのは正直、嬉しいですよ。リハビリも一緒にやってきたので。ライバルでもあるし、本当はこんなこと言ったら駄目なのかもしれないですけど……。でも、遥人は特別っていうか……」。

 時に仲間を蹴落とすぐらいの気概も必要なプロの世界において「生ぬるい」と言う人もいるかもしれない。だが、そんな温度感よりも大事なことがある。横山の言葉があったから、高橋は前を向き、高橋の躍動があったから、横山は再び目指す場所が明確になった……それがすべてだ。1軍のマウンドに並び立つその日を思いながら、2人のサウスポーは前進していく。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/12599 でHITボタンを押してください。

この記事の写真(2枚)

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー

文春野球コラム

阪神タイガースの記事一覧