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1点目は、天皇と安倍政権の関係について

 まず1点目として、天皇と安倍政権の関係である。いわゆる「平成流」と呼ばれる天皇制の特徴は、被災地訪問とともに、慰霊の旅があるだろう。社会全体が右傾化していると言われるようになって久しい。2015年に成立した、いわゆる「安全保障関連法」によって日本でも集団的自衛権が行使可能となったように、それまで以上に国際社会のなかでの日本の国際貢献、自衛隊の活動範囲は広がっている。こうした傾向に反比例するかのように、平成の明仁天皇と美智子皇后は慰霊の旅を積極的に行い、戦争の記憶を掘り起こし、その定着を図ってきたと言える。

「天皇陛下御在位三十年記念式典」で退席される上皇ご夫妻 ©AFP=時事

 2015年8月14日には安倍首相が「戦後70年」の首相談話を発表するが、そのなかで「反省」を間接的にしか言及しなかったのに対し、翌日の全国戦没者追悼式の天皇の「おことば」では「さきの大戦に対する深い反省」を表明し、その対比を見せた。そうした明仁天皇の姿勢は、安倍政権に批判的なリベラル勢力からも評価されている。

2016年8月8日、「象徴としてのお務め」についておことばを述べられる上皇さま 宮内庁提供

 また、天皇の退位の意向は、私たちがNHKのスクープによって知ることになる以前より、安倍政権に伝えられていたと言われている。しかし、それを正面から受け止めなかった。だからこそ、政府から伝えられるのではなく、報道によって天皇の退位の意思を国民は知ることになる。天皇と安倍政権のギクシャクさは何となく伝わってきていた。

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 一方、退位と即位が近づくにつれ、安倍首相は徳仁皇太子に対して、元号や儀式などについて説明をしたことが伝えられる。まるで、新しく天皇となる皇太子との蜜月をアピールするかのようでもある。

5月14日、天皇陛下に対する安倍晋三首相の内奏の様子 宮内庁提供

 そうした状況を海外メディアは注目していた。なぜ明仁天皇と安倍政権はギクシャクしているのか。その考え方の根本的な違いは何なのか。またその点を踏まえて、新しい天皇を取り込もうとしているのではないか。そうした質問をされることが数多くあった。

 ところが日本のメディアからは、政権と天皇の関係性を直接的に問う質問はそれほど多くなかった。日本の報道機関の安倍政権への「忖度」が懸念されているが、天皇との関係でもそのように感じざるを得ない。一方、そうした配慮をする必要のない海外メディアは、なぜ「伝統」を声高に叫び「保守」を自称する安倍政権が、天皇と対立するのかを尋ねてくる。