なぜ女性天皇や女系天皇を認めないのか
海外メディアが注目していた2点目は、女性天皇・女系天皇についてである。そもそも女性天皇・女系天皇とは何なのか、なぜ日本においてはそれが認められないのか、これまで男系天皇が続いてきたとされる歴史とは何なのか、質問されることが多かった。ヨーロッパにおいては近年、女性の国王が認められるケースが多い(君塚直隆『立憲君主制の現在』新潮選書に詳しい)。しかし日本ではなぜ今も変わらないのか。それを女性差別ではないかと指摘するメディアもあった。
現代社会において、性差を解消する方向へと進んでいるなかで、なぜ日本の天皇制は女性天皇や女系天皇を認めないのか。こうした質問は、1点目の安倍政権の問題とも関連させて質問されることも多かった。安倍政権はなぜそこまで女性天皇・女系天皇に消極的なのか。男系を支持する人々が、政権を支えているグループであることは理解しても、なぜ彼らが男系継承にこだわるのかまでは海外でもあまり知られていないようである。愛子内親王、秋篠宮家の眞子内親王・佳子内親王に対する日本国内の注目度を見たとき、彼女らを天皇にする必要があるのではないかとの意見もあった。
日本のメディアにおいても、女性天皇・女系天皇に関する質問は多かった。しかしより多かったのは、今後の公務負担をどうするのかといった問題を解決するための女性宮家に関する質問だったように思う。海外メディアはより根本的に、男女の差別の構造を天皇制が体現しているのではないかという根源的な問題を問うている。
ある種のフィーバーを作り出したのではなく
平成から令和にかけての海外報道を見ると、天皇制の抱える本質・構造を伝えようとしているようにも感じる。日本のメディアが、元号の制定過程や儀式の内容などの技術論を多く伝えていて、ある種のフィーバーを作り出したのとはやや異なり、ジャーナリズムとして制度の問題を報道しようとしたのではないか。冒頭の雅子皇后の活動も、根源的にはキャリアを持った女性が家の構造でこれまで活躍できなかったこと、ひいてはそれは女性への差別であったこと、それが現在少しずつ変化していることを伝えるもののように思われるのである。