目の前に雑誌があってもスマホでマンガを読む子どもたち
――マンガのデジタルシフトは今後も進んでいきそうですか?
東村 紙のマンガで育った人間なので、雑誌や単行本は残って欲しいですけど、スマホで読む手軽さを一度知ってしまうと戻れないんじゃないかな。
うちの子供が中学生なんですけど、学校が終わって友達が家に遊びに来たときに『進撃の巨人』が載っている別冊少年マガジンとかをわざと机に置いたんですよ。「今日、発売のやつだよ」ってね。でも、彼らの反応は「そうなんだ!」って言いながらそれぞれのスマホで最新の『進撃の巨人』を読むわけです。目の前に雑誌があるのにですよ。これはもう戻れんわ、と思いました。
私自身も、この間マンガ賞の審査員をやったんですけど、候補作が大量にダンボールで送られてきて、結果的には電子版を買いiPadにダウンロードしました。移動中やお風呂で読めるし。お金がかかってもラクなほうを選んじゃうんですよね。
――『偽装不倫』は「LINEマンガ」で更新されたあと、コミックでも出版されています。
東村 そうなんです。縦スクロールをメインに考えながら、ゆくゆくは単行本になることも意識して、横展開での流れも頭に入れながら、描いています。
デジタルではキャラクターの気分を色で表現していて、リアリティを出すために色の存在感を出しすぎず、淡いトーンで見せるようにしています。単行本もカラーのまま収録しているので、色を楽しんでほしいですね。
スマホマンガから単行本という展開から生まれた、東村作品の初のカラーバージョンコミック。デジタルシフトにより作品の拡散力、読者と共に作る制作の形、色を使った表現など、東村さんに期待以上の“産物”をもたらしたことは間違いない。
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