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マンガ家・東村アキコが語る「スマホで読む」ことでひっくり返った業界の常識

漫画家・東村アキコ『偽装不倫』インタビュー#1

2019/07/10
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ツールの変化によって漫画業界の常識がひっくり返った

 紙をめくって読む場合には寄ったり引いたり、俯瞰にしたりあおりにしたり、構図や視点を変えることや、動きをつけること、見せ場を作ることが大事なんです。だからかつては「顔マンガ」って言われたら、単調で「描くのがヘタ」という意味でしたが、電車で縦スクロールマンガを読んでいる人を見ていると、文字がないコマは飛ばして、セリフを追っている。ウェブは顔マンガのほうが読みやすいんだと思います。

 読むツールが紙からスマホに変わったことで、顔マンガがよしとされ、業界の常識が簡単にひっくり返ってしまった。私はその変化に対応していくことに抵抗はないし、流れに乗っていきたいと思っています。

 
「LINEマンガ」偽装不倫 #2より ©東村アキコ ©YLAB/LINE

東村 マンガを描くのはタブレットを使っていますが、最初はまったくやり方が分からず、アシスタントの子たちと手探り状態でソフトをいろいろと試しながら進めていきました。

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 慣れてしまえばラクで、何よりトーンを貼るという手間のかかる作業がいらないから紙のときよりもスピーディに仕上げることができたりと、プラス面のほうが多いですね。