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「タンカー攻撃、真犯人はイランでもアメリカでもない!?」元外務省・佐藤優の推理とは

佐藤優×片山杜秀“知の巨人”対談

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アメリカのインテリジェンスが弱い理由

片山 なるほど、それで日本政府としてはどの立場をとっているのですか?

佐藤 そこです。おそらくどの立場もとれていない。それは情報がないから。さらに日本政府が少し抜けているのは、アメリカに対して、正確な情報を求めていることですよ。

 この場合、情報をもらわないほうがいいんですよ。どうせ、ハメネイ師の関与は別として、イランがやっているという情報しかこないからです。トランプは、安倍―ハメネイ会談での内容を踏まえて戦争にGOサインを出さなかったとしても、アメリカ政府全体としてはイランの犯行と見ています。アメリカ人は情報能力があんまり強くないからです。

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片山 イラク戦争も、フセインが大量破壊兵器を保有していると情報分析を誤り、起こってしまったといわれています。なぜアメリカは、インテリジェンスが弱いのですか?

 

佐藤 軍事力が圧倒的に強いからです。有事が起こっても、武力が圧倒的に優っているので、たとえ情報に誤りがあっても勝てます。イラク戦争では様々な反省がありますが、だからといって戦争に負けたわけでも、ブッシュ政権が潰れたわけでもない。アメリカはコストがすべての国ですから、情報を重視していません。

 ところが、イスラエルやイラン、北朝鮮にとっての情報判断のミスは、国家存亡の事態につながります。だから彼らの情報収集能力は、アメリカを上回るものがあります。

片山 アメリカ人にはイランがやっていると見えてしまっている。いくら情報を要求しても、そういう内容しかこないなら、日本の対イラン政策の手足を縛るものでしかありませんね。

佐藤 そうです。だから、日本政府としては「難しいことはよく分かりません」みたいな顔をして、極力情報をもらわないで、局面が変わるのを待ったほうがいいと思います。