元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者の片山杜秀氏は立て続けに『平成史』『現代に生きるファシズム』という対談書籍を出版。
その“知の巨人”2人が丸山穂高議員の「戦争で取り返すことは賛成ですか?」発言を振り返り、政治家から失われてしまったもの、そしてそれが日本にもたらしうる悲劇について語る。(全2回の2回目/#1より続く)
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「オッパイ揉む」発言でも……3回当選している丸山氏
片山 日本政治の劣化について、佐藤さんとの共著『平成史』でさんざんお話ししてきました。最近も、耳を疑いたくなるような失言が相次いでいます。北方領土・国後島にビザなし交流訪問に参加中に、衝撃発言をした丸山穂高氏には、驚きました。
酩酊しながら、「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?」「戦争しないとどうしようもなくないですか?」と語ったと報じられています。日本維新の会から除名されても、逆に居直ったのか、いまだに国会議員を続けている。
佐藤 私は彼を、松下政経塾で教えているはずなんですよ。彼が政経塾で学んでいるときに講師として行っているから。
片山 あ、そうなんですか。ご記憶はないですか?
佐藤 なんとなくはあるんです。礼儀正しくてよい青年だったと思います。
片山 彼は、東大から経産省に入り、その後、維新から大阪で出馬し、当選した政治家です。つまりはエリート官僚です。下品な言葉を平気で発するような人間には見えない。表と裏がすごくあるというわけでしょうか。
佐藤 いや、私の仮説を言います。彼は、定向進化(生物の進化は一定の方向性をもっているという考え)を遂げたんだと思います。そういう意味で、彼はすごく優秀ですよ。
彼は、「オッパイ揉む」だとか「女買いたい」だとか、そうした言葉をどうも四島でも言ったらしいけど、そうした言葉を言えば気さくな政治家だと思われると、どこかで学んでいったんだと思うんです。実際、それで3回当選したという成功体験もあります。