文春オンライン
「オッパイ揉む」「女買いたい」なぜ政治家が“下品力”を競う時代になったのか

「オッパイ揉む」「女買いたい」なぜ政治家が“下品力”を競う時代になったのか

佐藤優×片山杜秀“知の巨人”対談

note

「ガルージン・ロシア大使が鈴木宗男さんに電話してきた」

片山 その手の発言は、彼を支持するような限られたコミュニティでは間違いなくウケていたということですね。日常的な発言だったからこそ、国後でも発してしまったということですか。

佐藤 はい。でも、これには困ってしまいました。当然、ロシア側が反応しますから。彼らはまず丸山氏の経歴を調べた。とくに小選挙区で3回も当選しているでしょう。つまりは民意の一定の支持を受けている。それから北方四島に行く代表団は政府が選んでいますから、事実上、日本政府のクリアランスも経ています。

 彼らとしては、これは酩酊したふりをしてロシアを挑発して、現在の日露関係の交渉を停滞させようとしている、日本の特殊な勢力による謀略じゃないか、というわけです。実際に、ガルージン駐日ロシア大使が鈴木宗男さんに電話してきたそうです。

ADVERTISEMENT

片山 一体、どういう背景があるのかと探りを入れたわけですね。

佐藤 はい、でも鈴木さん、「助かったべ」と言っていた。普通なら説明しても理解してくれない。だから鈴木さんは、丸山氏は数年前に飲み屋で喧嘩をして、人の手を噛んだことがあると伝えたそうです。

片山 ああ、そういう報道を見ました。酒に酔った勢いで一般男性と口論になったうえ、この男性の手に噛みついて警察に任意で事情聴取されたという話でした。

佐藤 それです。鈴木さんが、丸山氏は一般人に噛みついたと言ったら、ロシア側は、そんなに激しい論戦をしたんですか、と勘違いした。そうではなくて物理的に手に噛みついたと説明すると、ようやく彼らも理解した。丸山氏は、正常な大人の行動範囲からかなり外れている男性だ、と。

片山 なるほど丸山氏のケースは特異で、政治的な背景は何もないことがわかったんですね。

佐藤 はい。見ず知らずの人と口論して居酒屋で噛みついた菊の紋章の国会議員のバッジつけた人間は、なかなかいない。憲政史上初めてじゃないかな。だから、ロシアを説得できた。