忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。
今日は尾崎世界観さん。
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小学生の時に流行っていた「何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」というアレ。「お前言ったじゃないか、なんで約束を破るんだ」。問い詰めても「俺がいつそんな事言った? 何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」。こんな風に言われてしまうともう何も答えられなくなった。
大人になったら答えられる様になるのかと思っていたけれど、大人になった今では、あれから何回地球がまわったのか、そんな事自体がどうでも良くなった。
「どうして生きるの?」と「どうして死ぬの?」この2つは「何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」と似ている。何も答えられなくなる。
神蔵さんはそんな疑問に正面から向き合っていると思う。気の遠くなる様な実験を繰り返す科学者の様に。
死んでいく人と生きている人を愛したり憎んだり。夫であるスエイさんをひっくり返したら丁度、イエス様になる。愛憎。表と裏を行ったり来たりして写真で切り取って、文章で貼り付けている。そして貼り付けたそれがその内またどこかへ行ってしまう事も知っているんだと思う。
死んでしまった金魚をアパートの玄関先に埋めて、次の日に寂しくなってどうしても我慢出来なくて、掘り返してみたら確かに埋めたはずの場所にもう金魚は無かった。というのと、「もういいや、さようなら」と言って電話を切って、次の日に寂しくなってどうしても我慢出来なくて、電話を掛けてみたら相手に着信拒否されていたというのは似てる。
馬鹿だな、もういいや、さようなら。と言ったのはお前の方じゃないか。もういい歳した大人なんだから自分の言った事には責任を持たないと。
「俺がいつそんな事言った? 何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」
とりあえず、今日も生きるぞ。