ここのところ球界は“サウスポー問題”で喧々諤々だ。発端は7月1日、中日ドラゴンズ私設応援団によるツイートである。

 “【重要なお知らせ】この度、当団体で使用している「サウスポー」について、チームより不適切なフレーズがあるというご指摘を受けました。この件について球団と協議した結果、当面の間「サウスポー」の使用は自粛させて頂くこととなりました。
皆様には何卒ご理解、ご協力の程宜しくお願い致します。”
中日ドラゴンズ応援団 @dragonsouendan

 要はチャンステーマ『サウスポー』の歌詞に球団からクレームがついたため自粛するという話で、「お前が打たなきゃ誰が打つ」の「お前」というフレーズを以前から疑問視していた与田剛監督が球団に相談。応援団に伝えられ自粛に至ったという経緯。ずっと親しまれてきたこの応援歌に愛着を持つ中日ファンは当然猛反発。他球団ファンにも広がり、ワイドショーまで取り上げるトピックスになった。

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ナゴヤドーム ※写真はイメージです ©文藝春秋

「他球団にも“お前”が嫌だという意見がある」

 騒ぎを憂慮した与田監督は「“お前”より名前がいい」「他球団にも“お前”が嫌だという意見がある」と真意を説明。また「自粛して欲しいのではない。辞めろとは一言も言っていない」と呼びかけた。ちなみに選手の多くは「お前」を不快に感じておらず、大島洋平は「全然気にしていなかった。そんなこと考えたこともなかった」。高橋周平は「(お前でも名前でも)どっちでもいい。気にしてない」とコメントしている。

 騒ぎが大きくなったのは「『お前』を子どもたちが歌うのは教育上良くないのでは」という与田監督(が述べたとされる)の指摘と、初期段階で球団が一方的に自粛を求めた印象を与えた点だろう。小学生だって「お前」や名前の呼び捨て、命令形の応援が「そういう様式」であることは百も承知だろうし、選手を目の前にして「お前」と言うはずもない。もし目の前の選手を呼び捨てにでもしたら当の選手や周りの大人が諭せばいいだけのことだ。「子どもの教育」を盾にされると「球場は教育の場じゃないでしょ」と反論したくもなる。あくまで推測だが、与田監督が何の気なしに言った事に球団が過敏に反応してしまったのではないか。