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“お前”なんてかわいいもの? 今ならありえない「#不適切な応援歌のフレーズ」まとめ

2019/07/05
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「殺人パンチ」や「血祭り」も……

『惚れたぜライオンズ』
♪ロッテ阪急叩いてつぶせ
♪どんと一発殴り込み
♪腕は自慢の殺人パンチ
♪焼いて食べよか日本ハム
♪倒せ蹴落せ南海野郎
♪来るか近鉄血祭りだ
♪酒にマージャンたばこもやめた

 

 これも昭和50年発売の太平洋クラブライオンズ応援歌で、歌っている中村基樹さんは当時のRKB毎日放送アナウンサー。そんな人に「殴りこみ」「殺人パンチ」「血祭りだ」と歌わせるのだから牧歌的だ。詞は不適切というか物騒ですらあるが、曲は明るい音頭調。また歌詞には「山賊打線」も登場。昨今西武打線に名付けられているこの愛称はこの年の江藤慎一、白仁天、土井正博らゴツい選手が並ぶ打線をそう呼び始めたのが始まりである。

『ああ!王者』
♪たまには負けてあげようか

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 阪急ブレーブスV3真っ只中の昭和51年に主力の山口高志、加藤秀司、山田久志、大熊忠義が参加したマーチング調応援歌。その4番で歌われるのは「たまには負けてあげようか」とこれも今なら問題になりそうなフレーズ。しかしこの年の阪急は前・後期を制する完全優勝で、日本シリーズでは巨人に6度目の挑戦で初勝利。向かうところ敵なしだったのだから余裕ぶりも頷ける。

岡田の歯ぐき??

『阪神タイガースの優勝を知らない子供たち』
♪岡田の歯ぐきで巨人もびびる

 

 関西フォークのアンセム『戦争を知らない子供たち』の替え歌をローカルタレント、リリアンが昭和60年にリリース。ゲストボーカルに板東英二、やしきたかじん、笑福亭鶴瓶が参加した点も見逃せないが、大スター岡田彰布の歯茎をネタにするというさすがのノリ。多分本人は「まあええやん」と笑っていたのではなかろうか。文字通り優勝の味を知らなかった阪神ファンの子供たちはこの年、ついに歓喜にまみれることとなる。

 プロ野球の応援は選手と球団、ファンの持ちつ持たれつのバランスで成り立っているはず。しかし応援される側が些細な事でも応援をコントロールしようとすると、それはいとも簡単に崩れてしまうのではないか。紹介したような“不適切”な曲を聞いて育った世代も時代によって応援スタイルが変わっていくことは普通に受け入れているわけで、応援の勢いづけやノリ的に欠かせない「お前」まで言葉狩りのような形で押さえつけられると、やっぱり窮屈だ。

※応援歌レコードはすべて著者私物です

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