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破裂率の高い瘤と低い瘤の違いとは?

 前掲の脳神経外科疾患情報ページによると、未破裂脳動脈瘤の大きさは径2~25ミリメートル以上までと様々ですが、75%以上は10ミリメートル未満の大きさです。年間の破裂率は、個別の瘤によって異なるため一概に言えないものの、総合すると年間0.5~3%とされています。

 とくに径の大きい瘤、脳の後方にできた瘤、形のいびつなもの、多数できているもの、また喫煙者、高血圧患者、高齢者、さらには、家族(とくに兄弟姉妹)にくも膜下出血を発症したことのある人や若い人の瘤は、破裂率が高いと考えられています。

 こうしたことから、日本脳ドック学会のガイドライン2008年版によると、余命が10~15年以上あると考えられる患者に対して、径5~7ミリメートル以上の瘤が見つかった場合や、前述のような破裂するリスクが高い病変が見つかった場合に、治療を検討することが推奨されるとしています。

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 しかし逆に、5ミリメートル未満の小さな瘤は年間の破裂率が約0.5%と低く、治療するかどうかは慎重な対応が必要とされています。つまり、未破裂脳動脈瘤が見つかったとしても、5ミリメートル未満であれば1年で破裂するのは100人のうち1人未満で、99人以上は破裂しないのです。

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 もし脳ドックを受けて、5ミリメートル未満の未破裂脳動脈瘤が見つかったら、高血圧の治療や禁煙、節酒等を勧められるとともに、ふくらんで大きくなっていないかなどを確かめるために、半年から1年ごとの定期検査を勧められることになるはずです。その結果、破裂リスクが高くなっていると診断されると、あらためて治療を勧められるかもしれません。

「時限爆弾」を抱えながら生活することに

 ですが、なにも危険な変化が見つからなければ、定期的に検査をして経過観察することになるでしょう。つまり、実質的に「なにもしないで、そのまま様子を見続ける」ということになるわけです。

 実は、これが患者にとって大きな心理的負担になります。なぜなら、いつ破裂するか(破裂しないか)わからない「時限爆弾」を、頭の中に抱えながら生活することになるからです。実際に、未破裂脳動脈瘤が見つかって経過観察中の人のなかには不安になって、うつ状態になる人もいると言われています。そのため、ガイドラインでもうつ状態や不安が強い場合にはカウンセリングを推奨するとしています。