「私はこうだった。だからあなたも」という暴論
アドバイスしたがる人は、人の上に立ちたい人です。
アドバイスとは、それを始めた瞬間、相手の上に立つことができる、不思議なパワーを持っています。「~~したほうがいい」と言うだけで。先生と生徒の関係になれる。こんなに簡単なことはありません。
ところが、たいていの人は、他人にアドバイスできるほどの知識も、資格もありません。本来、アドバイスなんてできる立場ではない。でも、アドバイスしたい。
そういう人が何に頼るかというと、そう、「自分の経験」です。
仕事のやり方を指導してくる先輩にしろ、恋の武勇伝を語りたがる上司にしろ、孫の育て方に口を出してくる姑にしろ、たいていのおせっかいなアドバイスのもととなっているのは、「自分が体験したこと」です。
「私はこうだった」「僕はこれでうまくいった」という、自分の経験だけで言ってくる。百歩譲ってそこまではいいとしても、「だからあなたもこうすべき」「だからお前もこれでうまくいく」というのは、はっきり言って、論理が破綻しています。その人とあなたは違う人間なのですから。
それでも、こういう人たちは、自分勝手なアドバイスをしたがります。こっちが何を言い返しても、話になりません。
「私は違う」と言っても、「いいや、私はこうだった」。
「こういう意見がある」と言っても、「いいや、私はこうだった」。
「それはあなただけでしょ」と言っても、「いいや、私はこうだった」。
これは強い。まさに悪夢です。
いったいどうやったら撃退できるのでしょうか?
自慢話のほうがまだマシ
アドバイスしたがる人たちには、ひとまず「自慢」をさせましょう。
あなたにあれこれアドバイスしてくるから、めんどうなわけです。ですからいったん、実害の少ない「自慢話」へ話を誘導します。
「まずはリサーチ。で、プランニング……」
「先輩、それでたくさん契約取ったんですよね?」
「そりゃそうよ。社長賞だって、3回獲ったんだから!」
「結局、女ってのは押しに弱いんだからさ……」
「えー、さぞかしモテたんでしょう。いいなー」
「まあな。一度、こんな女がいてさ……」
「子どもってのは、3歳までが大事なの……」
「お義母さん、さぞかし苦労されたんですね」
「そうよ、私のころはね……」
このように、話の焦点を「あなたへのアドバイス」から「昔の自慢話」へずらす。もちろん、自慢話を聞くのだってしんどいです。イライラもするでしょう。ですが、根拠のない上から目線のアドバイスよりは、まだ聞いてられるはず。
そうやっていったん、自慢話にすり替えて避難したうえで、反撃のチャンスをうかがいましょう。
「私はこうだったんだから、こうしろ」という悪夢の論法から一刻も早く逃げ出すことが、この場合は、正解となります!
【今回のポイント】
上から目線でアドバイスをしてくる人は……
◆実は自分の経験だけを頼りにアドバイスしてくる。
◆NGアクション:何を言っても「いいや、私は」で返される。
◆OKアクション:自慢話にすり替えて、反撃のチャンスを待つ。
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五百田達成(いおた・たつなり)
心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」など。
Twitter @ebisucareer
記事提供:CREA WEB