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テレ東が放つ劇薬『ハイパーハードボイルドグルメリポート』はこうして誕生した

テレビ東京『ハイパーハードボイルドグルメリポート』上出遼平Pインタビュー #2

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――『ハイパー~』のロケでは現地に滞在する期間はどれぐらい?

上出 大体5日間ぐらいですかね。でも基本的には5日居たら、そのうちのどこか1日で1本分を撮る感じです。いろんな所に行って、いろんなトライをして、面白い人に出会えたらその1人に丸1日密着する。それで1本。それが例えば10日になったからもっといいものが撮れるかというと、別にそういうことでもなくて。10日滞在できるんだったら、もう1本全く別のものが撮れるかなという感覚です。

 

岩を投げられ取材拒否…… その先にある「彼らの思い」を聞きたい

――今回、ケニアのゴミ山でかなり危ない目に遭ったと先ほど聞きました。ご自身の危機管理は経験も積まれて、自分で判断できると思いますけど、他に3人ディレクターがいる。彼らもそれぞれ1人で海外ロケにいくんですよね。

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上出 はい。

――リスクも高い取材だと思うんですけど、危機管理はどうやって教えているんですか?

上出 それはなかなか伝えることは難しいので、そんなに危ないところには行かないようにしてもらっています。それは空気みたいなもので、ちょっとずつ失敗しながら勉強していってもらうしかなくて。うん、本当は一緒にロケ行けたらいいんですけどね。

 さっき言った通り、僕を入れてディレクターが4人いるんですけど、下から2番目のディレクターは僕のアシスタントとして昔一緒にケニアに行って。一緒にシンナー中毒の若者たちに囲まれて、顔ぐらいの大きさの岩をみんなで投げつけられたりもした。それも今振り返ったら結構ヤバくて「うわ、逃げろ逃げろっ!」みたいな。

 

 まあ彼らの領域に土足で踏み込んだから失礼だったということなんですけどね。当時はそこで拒絶されて終わりだったんです。でも本当はその先に彼らの思っていることを聞けたらもっと面白かったのになって思うし。それができているのが今の番組なんです。

ルールは”飯を見せる”だけ 台本がないからこそ撮れる「リアルドラマ」

――上出さんの撮り方というかイズムみたいなものは他のディレクターにどうやって伝えていますか?

上出 うーん、それも難しいですよね。でもディレクターによって全然違うVが撮れるということも、この番組のいいところ。フォーマットも全く決めてないし、出てくる人の紹介の仕方も全く決めてないので。「何でもいいよ」って。ただ「飯は見せてよ」、そこだけは守ろうねと。

ちなみに上出さんの普段のご飯を伺うと、「コンビニのカレー。これ、めちゃくちゃ美味しいですよ」とのこと

――他のディレクターが持ってきたVTRを見て、すごいビックリしたことってありますか?

上出 『アメリカ 極悪ギャング飯』(2017年10月放送)はビックリしましたね。バウワウっていうろくでもない黒人ギャング……。

――子どもが3人居るお父さんですよね。

上出 そうそう。奥さんと子どもたちは、お父さんが刑務所から出所してもろくに職につかないことに愛想をつかして別居していて。でもこの番組の取材を受けたことによって、お父さんが久々にその家族のお家に行くことになって。