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何でも「アベノミクスのおかげ」とはいえない

「民主党時代と比べて失業率も有効求人倍率も大幅に改善された」というのも、安倍総理がよくもち出す自慢だが、失業率の低下も、有効求人倍率の上昇も、共にアベノミクス前から始まっていたこと。図2のグラフを見ればわかるとおり、アベノミクス開始前後で傾きに全く変化は見られない。

 

 アベノミクス以降もずっと改善傾向が継続しているのは、単に金融危機が発生していないから。数字が悪化した時期を見ると、まず1991年のバブル崩壊以降だんだん悪くなっていき、1997年末に発生した金融危機の影響でさらに悪化している。

 そして、2003年あたりから徐々によくなってきたが、2008年のリーマンショックでまた猛烈に悪化する、という経緯が見て取れる。雇用を最も悪化させるのは金融危機で、アベノミクス以降は幸運なことにそれが発生していないのだ。だからずっと改善傾向が続いている。

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誰の賃金が上がっているのか

安倍総理が応援演説を行った会場で掲げられた、政権批判のメッセージ(左)と支持するメッセージ(右) ©共同通信社

 安倍政権以降の実質賃金の推移を見ると、実に悲惨な結果になる。実質賃金とは、名目値賃金(額面そのままの数字)から、物価変動の影響を除いた数値のこと。本当の購買力は実質賃金を見ないとわからないので、実質賃金は国民にとって最も重要な統計といってもよいだろう。では、図3のグラフを見てみよう。

 

 実質賃金はアベノミクス開始前より3.6%も下がっている。これは、名目賃金の伸びを、物価が大きく上回ったからである。そして、物価が上がったのは、消費税増税に加え、アベノミクス第1の矢(異次元の金融緩和)で無理やり円安にしたからである。なお、2018年の名目賃金が1年で1.4%も上がっているのは、算出方法を変えてかさ上げしたから。かさ上げしても大した数字ではないが。