アベノミクスが起こした戦後最悪の消費停滞
この実質賃金の下落が大きく国内消費に影響した。日本の実質GDPの約6割を占める実質民間最終消費支出が異常に停滞したのである。
図4のグラフからもわかるように、実質民間最終消費支出が2014年から2016年にかけて3年連続で落ちた。戦後初である。さらに、2017年は前年よりは回復したものの、4年も前の2013年を下回った。この4年前を下回るという現象も戦後初。アベノミクスは戦後最悪の消費停滞を引き起こしたのだ。しかも、この数字ですらかさ上げされている。2016年12月にGDPが改定され、数字が大きくかさ上げされた。政府は、「2008SNA」という国際的GDP算出基準への対応がかさ上げ要因であると説明していたが、その基準とは全く関係ない「その他」という部分で、消費の部分が大きくかさ上げされている。「その他」でかさ上げしていなければもっと悲惨な結果になっていたのは間違いない。
また、安倍総理は賃金というと「賃上げ2%達成」を盛んに強調するが、この賃上げ率は春闘における賃上げ率を使っている。問題は、春闘の賃上げ率のサンプルだ。当然のことながら、春闘に参加した組合員しか対象になっていない。そこで、賃上げ率の対象となった組合員数の、全体の雇用者(役員を除く)に対する割合を見てみよう。
図5の表からもわかるように、アベノミクス以降を見ると、安倍総理が盛んに強調している賃上げ2%の対象となった労働者は全体の約5%程度しかいない。
5%にしか当てはまらない数字を声高に言い、あたかも国民全体の賃金が上がっているかのように錯覚させようとしている。
しかも、この賃上げ上昇率は名目値である。この上昇率から、消費者物価指数を差し引いた実質賃金上昇率を出すと、実に残念な結果になる(図6のグラフ参照)。
なんと、民主党時代最も低かった2012年の実質賃金上昇率1.72を上回った年は、アベノミクス以降だと、2016年のたった1回しかない。2014年なんか大幅なマイナス。このように、実質賃金上昇率でみると民主党時代よりもアベノミクス以降の方が圧倒的に低いのである。