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「自民が引っ張っていれば、よくはならないけど悪くもならない」という声

 次の記事を読んだ。

「この貧困、自己責任だもの 格差認め自民支える若者たち」(朝日新聞デジタル7月2日)。

「自分は貧困層だと思う」というアルバイトの中村さん(36歳)は、ホームレスになる不安が消えず、ハローワークにも通っている。

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 しかし、

《その中村さんの投票先は自民党だ。「この先どうなるかわからない。自民が引っ張っていれば、よくはならないけど悪くもならない」と言う。》

 格差の拡大や貧困を政治の問題とは感じないのか、と記者が尋ねると「仕方ないって思う。自分がこうなったのは自分が考えた結果だから」。

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 他の声も紹介されている。

《埼玉県戸田市の無職男性(33)は「国に責任ですか。そういう考え方もあるんですね」。東京都世田谷区のアルバイト男性(31)は「世の中にあれこれ言う前に自分を鍛えなきゃ」。いずれも自民の支持だと答えた。》

 早稲田大の橋本健二教授(社会学)の分析によれば、

《「格差が広がってもかまわない」と考える人の割合は、この10年で各所得層で増えた。しかも増加率は貧困層で最も高く、貧困層の約4人に1人は、我が身にふりかかる不利益を受け入れている。そして貧困層の4割は自己責任論を肯定する。》

 いかがだろうか。これら若者の態度は「自己責任」という言葉を定着させた政治の勝利なのかもしれない。

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 そして思うのだ。

「20~30歳代の若年層の自民への支持が高い」のと「この世代は投票率が低い」。これらは矛盾にみえるが両立する。積極的支持というより、ただ受け入れているという態度がうかがえるからだ。投票率が低い謎もここで解ける気がする。

 そう考えると「自民、若年層の高投票率を期待」というのは、“本当に大事な分析”はできていないのではないか?

 そんなことを感じた「若者と自民党」読み比べであった。