文春オンライン

「仕事は怒られながら覚えるんだよ!!」会社や家庭で怒鳴っている大人に思うこと

恐怖政治は、組織にとって「ゆるやかな自殺」です

2019/07/22
note

 昔に比べると理解してもらえることがやや増えたように思いますが、私は大声や怒鳴り声が非常に苦手で、聞くと胸がドキドキしたり、体がこわばってしまうことがあります。

 だからこそトラブルになったり仕事でミスをして怒られたりしないよう日頃から気をつけてはいるものの、それでも運悪くそういう場面に出くわしてしまうこともしばしばです。

怒鳴られると本来のパフォーマンスが発揮できなくなるのでは?

 例えば漫才の中で、ツッコミ役が怒号を飛ばして相方を思い切り叩いている様子を見るだけでも「うわあ……」と反射的にテレビを消してしまいますが、一番しんどいのは、職場などにおいて、年長者が部下や後輩を大声で叱責しているところに居合わせたときです。そんなときに「ザーッ」というノイズのような耳鳴りに襲われたり、体がこわばったりするのは私だけかと思っていたのですが、周りで眉間にしわを寄せながら嵐が過ぎ去るのを待っている同僚たちを見る限り、私のような人が特別に「少数派である」というわけでもなさそうです。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

 あれ、どうして怒鳴っているんでしょうか。

 私が知らないだけで実は「怒鳴られた方が人間の能力はよく育つ」みたいな研究結果があるならまだしも、経験上、怒鳴られると「怖い」という感情が先行して萎縮してしまいますし、心身ともに緊張状態に置かれてしまうことで、その人が持っている本来のパフォーマンスが発揮できなくなるように思うのです。

 私が以前働いていた会社では、人手不足のため入社したての新人が必要な研修をほとんど受けられず、全く何も分からないまま電話に出なければならない状況で、担当者に内線で引き継ぐだけでなぜか「何だよ、今忙しいんだよ!! 適当に話つけとけよ!!」と怒鳴られる、理不尽極まりない環境に置かれていました。

野球部の顧問とかならまだしも

 昔からいる先輩社員たちは「仕事は怒られながら覚えるんだよ」と開き直っていましたが、怒鳴られていた当の新入社員に「大丈夫ですか?」と声をかけると「僕、さっき何て怒られてましたっけ……すみませんびっくりして頭が真っ白になってしまって……」と半泣きになっていて、ますます「これは良くないぞ」と不憫に思えてなりませんでした。

©iStock.com

 仮に、怒鳴っているのが野球部の顧問とかであれば、まだ分かります。グラウンドの端から端まで聞こえるようにするには、大声を出さないと伝わらないと思いますし。でも、屋内で、しかも目の前にいる人に向かってあんなに大きな声を出さなくても、多分、ちゃんと聞こえると思うんですよね。であれば、今後のミスを防ぐためにも、オフィス全体の平穏を保つためにも、できれば怒鳴ったり大きな声で相手を威圧するのではなく、声のトーンを抑えて指導した方が、よほど効果的なのではないでしょうか。