「出刃包丁をこたつに突き刺したことがあります」
検察側からの質問もなされた。
検察:証人は、被告人が崚太君に勉強を教えているところを直接見ていましたか?
T:直接は見ていません。でもホワイトボードが壊れているのは見ました。叩いたり、怒鳴ったりしているということは聞いていました。きついなとは感じて、「できるだけ優しくしてやれよ」と伝えました。
検察:「勉強を教えるのをやめろ」とは言いましたか?
T:言っていないです。
検察:さきほど、胸に包丁が刺さって崚太君が亡くなってしまったことはやむを得なかったと言いましたが、本当にそう思っているのですか?
T:思ってます。(※あまりに堂々と間髪入れずにこの返答だったので、検察側の質問者は一瞬たじろいだ。)若い方々、現代のひとびとからすると、異常かもしれませんが、われわれの時代にはよくあることでした。時代についていけなかったことは悪かったと思いますが、憲吾はそれだけどうしても入れてやりたいと思っていたのだと思います。
検察:証人も被告人に対して刃物を向けたことがあるのですか?
T:あります。出刃包丁を持ち出して、憲吾と次男と妻のいる前で、こたつの天板の上に突き刺したことがあります。
検察:なぜですか?
T:覚えていませんが、憲吾が高校生のころだったと思います。
検察:崚太君に対してはどんな思いですか?
T:内孫ですから、どうしても跡を継いでほしいと思っていました。いまは、遺骨を早く納骨したい。
検察:佐竹家の墓にということですか?
T:それはまだ考えていません。
なんと被告人自身も、父親から刃物を向けられ脅された経験があったのだ。被告人とその父親の関係性を聞くにつれ、被害者である崚太君と被告人のイメージがどうしても重なり合ってきた。あまりにも悲しい負の連鎖である。
続く#2では、被告人の妻Mさんの証言を中心にレポートする。