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「事件の経緯を知って、吐き気がする」教育虐待当事者の憤り

 教育虐待によって一度は心をズタズタにされたひとたちを、私は複数取材して『ルポ教育虐待』にまとめた。そこに登場するある男性は、佐竹被告と同じように有名進学校に進学するも高校で中退。大学にも行かなかった。しかし「このまま家にいたら自分が危ない」と考え、家を出た。

 佐竹被告と違うのは、親からの経済的な支援を受けず、新聞奨学生として住み込みで仕事を始めたことだ。奨学金を資金として一人暮らしを始め、経済的基盤を築き、家族をもつこともできた。

 私の裁判傍聴記を読んだとのことで、ほかでもないその男性本人からメッセージをもらった。本稿の締めくくりとして引用する。

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「事件の経緯を知って、吐き気のするような心持ちです。

 被告人は、成績が落ち、大学に行かず、父親に見限られてからも、自己肯定感が低いまま過ごし、自分が中途半端な人間であるという意識を固定化させてきたように思います。

 劣等感をごまかすため何にも関心がないように振る舞い続けた結果、劣等感を心の奥底にしまい込むことに成功したのだろうと思います。自由になり、仲間ができ、恋人ができて自分を取り巻く世界が変わっても、世の中に対する自分の視点を変えることができなかったのでしょう。

 なれなかったものに自分を重ね、今度こそ息子を父親の認める人間にしなくてはならない、そのためには無駄な時間は使わず、最短で目的を達成しなければいけない。刃物を使った脅しのなかで、息子の声は聞こえていなかったのでしょう。

 当時歯向かえなかった自分と、怯えながらも被告人に向き合っている息子を重ね、嫌悪と焦りがあったのだろうと思います。

 実は私の母親もときどき聞いてきました。『(孫に)中学受験はさせないの? お金なら援助するわよ?』。最近は言わなくなったけど。

 私はこう言っています。『させないよ。本人が言ったら考えるけど、基本的には中学くらいまでは、嫌ってほど遊ばせたいから。別に勉強できなくてもいいんだ。ひとに好かれる子どもなら』。

 それでも母親はこう言います。『でも、いざってときにジャンプできるような基礎力はつけないとね。親のケアも必要よ?』。

 わかってないんだな~って思います」

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