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 自由が丘で3年前からタピオカミルクティーを提供してきたカフェ店主のBさん(女性、30代)が嘆く。

「うちで仕入れていたタピオカは、真空パックで小分けされたもので、冷凍庫で保管していました。1キロ800~1000円で、1日2、3杯しか出ていなかった。注文が増えたのは、1年ほど前からです。タピオカミルクティーは、タピオカの原価が1杯10円前後で済み、700円前後で売ればかなりの儲けだったのですが、今年に入ってからタピオカそのものが手に入らなくなってしまって、泣く泣くメニューから外してしまいました」

 入手ルートの限られる個人経営の店からは、タピオカがメニューから“消滅”しはじめているというのだ。

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記者の目の前で収穫されたキャッサバ芋 ©文藝春秋

厨房を歩くだけでペチャペチャ音がする

 一方で、勢力を伸ばし続けているのが、ブーム発祥の台湾から出店する人気チェーン店。都内近郊の人気タピオカ店でアルバイトをする女子大生のCさん(20代)が打ち明ける。

「タピオカ屋って女の子の職場だから、かわいくてオシャレに見えると思うのですが、意外とブラックで……」

 Cさんは、働き始めて1年ほど。日に日に忙しくなっていく現状に不満を漏らす。

人気タピオカ店でバイトするCさん ©文藝春秋

「1年前に比べると、お客さんの数は3倍以上、日に1000杯近く売れて、50万円以上を売り上げる。それでいて、時給はずっと変わりません。実は、長時間の立ち仕事な上に、かなりの重労働でもあるんです。腕に筋肉が付いてきたほどです。毎日、3キロの重さがある鍋にお湯を張ってタピオカを煮るんですが、蒸気やこぼれた湯で火傷することもしょっちゅうあります。ブームになってからは、家族連れや中高年まで客層が広がったので、それを意識してか髪やネイルも明るすぎるのは禁止になってしまい、オシャレもできません」

 新たな店舗を次々出店し、慢性的に人手不足。社員の数が足りず、店長もマネージャーも数店舗を掛け持ちで担当し、フラフラになりながら働いているという。

「そんな激務でも、社員の手取りは20万円弱程度だそうです。実際に過労で倒れて入院した社員もいました。管理が行き届かず、最近心配なのは衛生面です。現場に余裕がないので、ガムシロップやミルク、タピオカが床にこぼれても拭く暇がなく、厨房を歩くだけでペチャペチャ音がする。友達からは『いつも靴が汚いね』って言われます。タピオカで滑って転ぶことも多いんです」(同前)