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批判の矛先は、宮迫・亮から岡本社長へと変わっていった

 真摯に反省している姿を見せた宮迫さんは、金をもらっていたことを会社に話すと「静観です」と言われ、謝罪したいと申し出ると「やってもいいけど全員連帯責任でクビにするからな」と社長に言われたことを明かした。印象に残りやすい、インパクトのある言葉が並べられ、自分たちの無力感をアピールしたことで、聞き手の頭には、謝罪したかったのに止められたことが事実となり、背景には世間が一番問題視する隠蔽やパワハラがあったことになる。だがそこには、彼らの吉本への熱い想いもある。聞き手側はこれによって、考えを変えていくことになった。

©文藝春秋

 批判の矛先は謝罪をさせなかった吉本興業へ、パワハラともいえる発言をした岡本昭彦社長へと変わっていった。

「なによりも、おとつい宮迫博之くんと田村亮君にああいう記者会見をさせてしまったことに関して、二人に対して深くお詫び申し上げます」(岡本社長)

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 冒頭、岡本社長は緊張した面持ちでこう述べて、丁寧に頭を下げた。宮迫さんの処分の撤回を発表。今後は、コンプライアンスの徹底と芸人ファーストで物事を考えるという2点も強調し、芸人たちとのコミュニケーション不足が一番の反省点だと、書面に落としていた視線を上げ、単調ながらもはっきりと述べた。

宮迫・亮の話を信じたくなる岡本社長の話ぶり

 ところが質疑応答に入ると、岡本社長の口調が一変する。最初は口が重くても頼りなくても、徐々に話がわかりやすく滑らかに展開した方が、人の心をひきつけるといわれる。この会見は、その逆の展開になってしまった。

涙を見せることもあったが…… ©吉田暁史

 返答は回りくどく、歯切れが悪く、要領を得ない。質疑がかみ合わない場面も多く、言い訳がましい釈明にしか聞こえない。記者からは確認のために、同じ質問が繰り返される。論点が分からず、言いたいことがわからないし伝わらない。人は自分がわかりやすい、脳が処理しやすいものを真実と認知する傾向がある。これを「処理の流暢性」という。双方の話に食い違いが起きても、訳のわからない岡本社長の話より、宮迫さんたちの話を信じたくなってくる。

 質問されると言葉につまり「う~ん」と考え込む。身体を揺らし、目をしばたたかせる。言葉を選んでいたのかもしれないが、これらの仕草から、社長は本当のことを話しているのだろうかと疑ってしまう。吉本興業の社長なのに、なぜこんなに話が苦手なのか、反応が遅いのかと驚いた人も多いだろう。

「1つは冗談で、『テープ録ってるんちゃうの?』」(岡本社長)

「うーん。僕的にはそう思っていないが、相手がそう感じているならそうですね」(岡本社長)

 社長と芸人らの間のコミュニケーション不足や、コミュニケーションギャップは至るところで見受けられた。