小林正樹監督のドキュメンタリー映画『東京裁判』は、戦犯が裁かれる記録ではなく、人類はあの戦争で何をしたのかを我々に示した。その作品が今夏、4Kデジタルリマスター版で復活する。監修は、83年の公開時に監督補佐兼脚本を担当した小笠原清さん。
「上映が繰り返されたことでフィルムが傷んできたため、長くデジタル化を望んでいました。今回のデジタル処理によって、画、音ともに魔法のようにクリアになりました」
米国保管の膨大な裁判映像や日本のニュース映像、そして玉音放送までもが甦った。
「9歳の頃に聴いた玉音放送はよく聴き取れず、内容も理解できなかった。それが明瞭になり字幕化も実現しました」
作品へ込めた思いとは何か。
「ただ反戦を訴えても戦争の実態は見えません。なぜ誰も流れに抗(あらが)えなかったのか。何も知らずに加担するとどれだけ悲惨な目に遭うのか。考える肥やしにしてほしいのです」
公開時、小6ほどの娘を連れた母親に、その子にはちょっと無理だと監督が声をかけると、「わからなくても見せたほうがいい」と応えたという。
「それは監督が好まれた話で、ひとつの真理だと思います。玉音放送体験が私にも大きなものを及ぼしましたから」
INFORMATION
映画『東京裁判』4Kデジタルリマスター版
8月3日より、ユーロスペースほか全国順次公開
http://www.tokyosaiban2019.com/