今年7月、大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で、アルバイトスタッフが亡くなるというショッキングなニュースがあった。原因は熱中症だった。

 他にも連日の猛暑の中、相次ぐ熱中症による体調不良で倒れる人が続出。総務省消防庁によると、今年7月29日~8月4日までに熱中症で緊急搬送されたのは1万8347人、死亡数は57人に上っている。

 予防策は、決して他人ごとではない「熱中症」をまずは知ること。週刊文春で様々な視点から取り上げてきた、真夏の猛威「熱中症」企画をここに紹介する。

※「週刊文春」2015年7月30日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

「全身の倦怠感が慢性的に続き、食欲もわかないし仕事にも集中できない……」

 熱中症と違い命の危険にこそ直結しないが、多くの人が悩まされているのがこの猛暑による「夏バテ」である。

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(1)睡眠不足にはエビとナスが効く

 医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が夏バテの“メカニズム”を解説する。

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「そもそもヒトの体は、体内温度を一定に保とうとするだけで大きな負担がかかる構造になっています。

 通常であればその負担に耐えることができますが、長期間に亘って“高温・多湿”などの負担がかかったりすると、体温を外部に逃がそうとして、バランスを崩してしまう。これが夏バテの正体です」

 森田氏によると、夏バテには、「昔ながらの夏バテ」と、「現代の夏バテ」があるという。

「昔ながらの夏バテ」は、暑さによる体力の低下や食欲不振による疲れやすさなどからくるもので、「夏痩せ」とも言われていた。

 一方で「現代の夏バテ」は空調設備の発達により、外気と室内の温度差が原因となって自律神経のバランスを崩す症状を指す。

 2つの夏バテに共通するのは体のダルさや思考力低下、頭痛やめまいといった症状である。

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「いずれの夏バテに関しても症状の改善には、『睡眠と十分な休養』と『体調を改善する栄養』が必要になります。

 睡眠と食事が大切と言われると当たり前のように思われるかも知れませんが、夏バテをしている人に自分の生活習慣を振り返ってもらうと、この2つが十分でない事が非常に多いんです」(同前)

 たしかに暑さによる寝苦しさから睡眠不足に悩む人は多いだろう。

 どうすれば夏の夜に快眠できるのか。

 健康栄養学が専門の大澤俊彦愛知学院大学教授は、良質な睡眠をとるための食材として、「エビ、ナス、チョコレート」を挙げる。

「タンパク質に含まれるグリシンというアミノ酸は質の高い、深い睡眠に効果があるとされています。グリシンは最近はサプリメントも出ていますが、エビなどの海産物に多く含まれています。

 また、『GABA』というアミノ酸には、不安感を抑えて精神を安定させる作用があります。これは発芽玄米やナスなどに多く含まれています。『GABA』を含んだチョコレートも手軽に入手できます」