衝撃的な一発だった。7月30日、千葉ロッテマリーンズの一軍の本拠地であるZOZOマリンスタジアムで炎天下の中、行われていたイースタン・リーグの巨人戦。いわゆる一軍の試合前に行われる親子ゲームで昨年のドラフト1位・安田尚憲内野手が鮮烈な光を放った。6回無死一、二塁の場面。ジャイアンツの古川から右翼スタンド上部の照明を直撃する先制の3ランを放ったのだ。最大9メートルの強風が吹き荒れる中での一撃。風に乗せられた部分はあるとはいえ、あと一歩、上に行けば間違いなく場外という当たりだった。過去、外国人選手では何度か飛ばした選手はいたが、日本人となると容易には思い出せない。衝撃の一発にロッカー内のテレビで試合観戦をしていた一軍選手たちも一様に驚きの声を上げた。

7月30日の二軍戦であわや場外弾という特大な本塁打を放った安田尚憲 ©千葉ロッテマリーンズ

マリーンズ首脳陣が思い描く安田の未来像

 試合後に報道陣に囲まれた安田は茶目っ気たっぷりに「こんなに記者の方に囲まれるなんて久しぶりです」と笑った。確かに今春のキャンプはドラフト1位ルーキー藤原恭大外野手に注目が集まり、1年前は注目の的だった安田を取材するマスコミは決して多くはなかった。

「一軍首脳陣が見ているとか、いないとかは関係なく、しっかり結果を残し続けていきたいと思っていました。まだ(一軍公式戦が)あと2カ月あるので、しっかり準備をして呼んでいただける時に、チームの勝利に貢献できるような選手になりたい」と質問に対して丁寧に話をした。バックネットから見守っていた井口資仁監督は「いい当たりだったね。あそこまで飛ばさなくてもね(笑)。打撃フォームをいろいろと考えながらやっている。タイミングを見計らってチャンスをあげたいと思う」と笑みを見せた。指揮官は安田の動向を誰よりも気にしている。一軍の試合前には必ず二軍の試合を映像でチェック。成長している過程をしっかりと見ながら、昇格のタイミングを見定めている。

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 ちなみにこの衝撃の弾道は球場に設置されている測定器によると打球速166.9 km/hで、この日の最高。打球角度は32.7°。推定飛距離は131.0 mだった(マスコミは推定145~150m弾と報道)。2年目の今年は平均打球速137.82km/h。最大打球速で172.6km/hとなっている。マリーンズの主砲であるレアードが平均140.95km/hで最大が172.0km/h。井上が平均139.56km/h、最大174.9km/hと遜色なく、一流のパワーヒッターの数値カテゴリーに極めて近い数値まで到達している。

 安田を二軍で見守り続けている今岡誠二軍監督も目を細める。「彼は将来のマリーンズを背負う選手。それは間違いのない事。あとはどれくらいのスターになれるか。オレたちは彼をスーパースターになり、マリーンズだけではなく球界を代表する選手になってくれると思っている。侍ジャパンの4番を打つような選手に育てないといけない」と鼻息荒く、口にする。マリーンズ首脳陣が思い描く未来像はチームのクリーンアップを打つというただの主力ではなく誰もが憧れる日本を代表するスラッガー。だからこそハードルは誰よりも高く設定され、厳しい目が注がれている。