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巨人・坂本勇人に学ぶ、本当にプロフェッショナルな仕事とは?

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/31
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本当のプロフェッショナルとは

 同時に全力プレーとは何かを考えさせられた。昔、高校からプロ入りしたばかりの若手選手が言っていた。「プロの選手が一塁まで走らない意味がわからないんですよね。全力疾走するのは最大4回じゃないですか。フライあげちゃったら走れねーし。1日4回ぐらい走れよって思いません?」。当時は僕も若かったので似たような感想を持っていたが、今は少し違う考えになった。どんな世界でも、プロはプロセスで評価されることはない。特にプロ野球は頑張ったことが評価される世界ではない。全力疾走して偉い、という価値観はアマチュアのものなのだ(それでも走れるなら走った方がいいとは思うが)。この日の坂本のように、自分の体調をみて、緩めるところは緩め、自分のパフォーマンスを最大化することに集中する。それが本当のプロフェッショナルなのだ。中前打を見送ったシーンは2死無走者だった。菅野なら問題なく後続を抑えられる。そんな計算もあったに違いない。

 どんな場面であれ、自分のパフォーマンスを最大化する、という意味では、9回からライトに入った陽岱鋼のプレーもすごかった。會澤の大飛球を背走し、フェンスにぶつかりながらグラブに収める。たったいまグラウンドに出てきたばかり。しかも98%煮詰まったゲームに放り込まれても、いきなり100点に近いプレーを見せられる。まさしくプロだ。

 この日の試合は、3時間弱のゲームにプロフェッショナルの粋がギュッと詰まった素晴らしいエンターテイメントだった。僕は「こりゃもう優勝だな」とこれまた誰でもわかることをつぶやき、凡人のささやかな抵抗として(何への)コンビニでスーパードライを購入したのだった。

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