2019年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。いいね!部門の第5位は、こちら!(初公開日 2019年4月15日)。
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最近、ネットで大きな話題になったのが、2016年に逝去した若手の日本思想史研究者・西村玲(りょう)さんについて報じた『朝日新聞』の記事だ(2019年4月10日付け)。
西村さんは2004年に東北大学で文学博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員(SPD)に選ばれ、さらに2008年に出版した著書『近世仏教思想の独創─僧侶普寂の思想と実践─』は日本学術振興会賞と日本学士院学術奨励賞を受賞するという、輝かしい業績を持っていた。
20以上の大学に応募するもポストがなく……
私自身、修士課程までとはいえ、かつて文系の大学院で学んでいた経験がある。なので、上記の彼女のプロフィールには「すごい」「羨ましい」という称賛の言葉しか見つからない。よくわからない人のために(不正確を承知で)野球で例えるならば、甲子園出場校のエースから、プロ入り後に月間MVPと新人王に選出された若手選手……ぐらいの優秀なプレーヤーである。
だが、西村さんはそれだけの業績にもかかわらず、20以上の大学に応募したが常勤のポストに就くことができなかった。日本思想史という、昨今の大学では好まれない「役に立たない学問」を専門にしていたとはいえ、あまりにもひどい話だ。
もっとも『朝日新聞』報道では詳しい事情が曖昧に書かれていたが、西村さんの著書の版元出版社の元経営者でもある中嶋廣氏が自身のブログ上で紹介した本人の遺稿集(元編集者であった両親が作成)などによれば、彼女の逝去には他の事情もあったようだ。