世界最大のカブトムシも死んだ状態で発見
世界最大のカブトムシとして日本を含め世界で絶大な人気をほこるヘラクレスオオカブトも、標本コレクションの一つとして死んだ状態で南米エクアドルで見つかった。今回の捜査の前ではあるが、同じエクアドルでは昆虫を日本に持ち帰ろうとしたとして日本人の男が有罪判決を受けている。生物が途中で死ぬ危険を冒してまで生物を手元に置こうとする飼い主は、もはや動物愛好家とは呼べまい。
「(我々は)石一つ残さずひっくり返して野生動物の犯罪者が法の裁きを受けるようにする」
こう訴えるのは捜査に関わったワシントン条約事務局長、イヴォン・イゲーロ氏だ。今回の作戦終了後、ほかにもコメントを発表した人物がいる。
「国際・国内レベルでの緊密な連携は、野生動物犯罪と取り組むのに決して軽視してはならないことが『サンダーボール作戦』でもはっきり示された」
少し硬い口調だが、このコメントを発表したのはWCOの御厨邦雄事務総局長。今回の捜査はこの日本人指揮官が音頭を取る1人となっていたからだ。
76年入省の財務省OBが支える国際捜査
今回の国際捜査は、スパイ映画・小説の「007」シリーズ作と同じ「サンダーボール作戦」と名付けられた。2017年の「サンダーバード作戦」、2018年の「サンダーストーム作戦」に続く「サンダー」作戦の第3弾になるという。最近、国際捜査に積極的に乗り出しているWCOの動きを支えているのが、この御厨事務総局長だ。
目標として掲げるひとつが、税関のデジタル化。今回の捜査でもインターポールと連携してネット上の取引情報などを分析。ネット捜査を通じてスペインで21人を逮捕しており、成果を見せ始めているといえる。 御厨事務総局長は1976年に大蔵省(現財務省)入省。密輸などを取り締まる関税局監視課長のほか、1990年にはスイス・ジュネーヴに駐在し、貿易交渉に参加した経験もある国際派。同期には金融庁長官を務めた畑中龍太郎氏などがいる。2002年からWCOの事務総局次長を7年間務め、2009年にアジア系として初の事務総局長に就任。2018年にはスペイン出身の候補との接戦を日本政府の全面バックアップを得て競り勝ち、異例の3期目に突入した。麻生太郎財務大臣も「強い指導力を発揮してきた」と太鼓判を押す人材だ。
ただ、監視の目が届きにくいダークネットなど、デジタル化ではむしろ犯罪者が先行している。加えてデジタル化を推進するグーグルなど巨大IT企業自体が国際性を武器に関税や法人税の課税場所などで各国政府と対立することも目立ってきた。巨大IT企業アマゾンなどから大量に送られる小包などにどう課税していくかも焦点の一つ。巨大なグローバル企業とどう向き合うか。国際機関が追う相手は、野生動物や犯罪者だけでは済まなそうだ。