愛くるしいライオンやトラの子供からヘラクレスオオカブトまで、野生動物を闇で取引するネットワークが摘発された。国際刑事警察機構(通称インターポール)などと過去最大規模の国際捜査を指揮したのは世界税関機構(WCO)のトップに君臨する財務省OBの日本人。闇取引の過程で死んだ生物も多数見つかっており、動物愛好家の憤りを招いている。
インターポールやWCOが6月、世界各国の捜査当局、環境保護当局と連携して捜査したのは109カ国。捜査の過程で保護・発見された生物は絶滅寸前のカットバラングールなど霊長類が23匹、闇取引されていたライオンの子供やホワイトタイガーの子供などネコ科の大型動物が30頭、コフラミンゴなど鳥類は4300羽、カミツキガメなどカメが1万匹に爬虫類も1500匹。熱帯魚やタツノオトシゴも見つかった。
絶滅寸前のサルはおびえたようにオリの外を見つめていた
なかでも悲惨な状況に置かれていたのは生後3カ月とみられるライオンだ。ライオンを保護したインドの野生動物犯罪対策局や地元紙によると、保護は深夜のカーチェイスから始まった。6月1日未明、不審な車両を発見した同局が追いかけた末、車のなかをみると、開け口が縫い合わされた袋から、体をやっと動かせる程度のスペースしかないオリに押し込められたライオンの子供と、絶滅寸前のサル、カットバラングールの子供などを発見。調べたところライオンは移動のストレスで弱っており、サルに至っては傷だらけの尻尾を切断しなければならないかもしれない状態という。
近くの動物園で保護される前に一般にも見られる状態にされていたライオンはあごがやせ細って黄色がかった体毛があちこち抜け落ち、けがをしたのか太もも部分が少し赤らんでいる。オリは極小で、足も伸ばせないほどの大きさだ。真っ黒な体に頭のてっぺんだけきれいな白髪をみせるカットバラングールも、おびえたようにオリの外を見つめていた。