還暦でも「大変だ。これからどうしよう」
今後はさらに寿命が延びて人生100年時代を考えなければならなくなるとの説もある。サラリーマンがこれからをどうやって生き延びるかは深刻な問題だ。私も今年で還暦。この年頃になると、学校時代のクラス会の出席率は格段によくなる。以前ならば、還暦はちょっとしたお祭り。もう働く必要がなく、あとは孫の顔でも眺めながらつつがなく余生を過ごすのが老後だった。
ところが最近は様子が違う。クラス会で久しぶりに顔を合わせると、どの同級生も「大変だ。これからどうしよう」という話ばかり。大企業のサラリーマンでも定年後の再雇用では給料が激減することを嘆き、どこか雇ってくれるところはないかと不安顔だ。医者や弁護士などの特殊技能を持つ人や自営業、会社オーナーなどは別だが、彼らに声をかけてくれる雇い主は少ないというのが現実だ。
世の中では人手不足が深刻な問題になっている。会社も若い優秀な社員を雇うことが非常に厳しい状況にあるという。ならばこうした定年後のおじさん社員を雇えばよいかというと、そういうわけにもいかない。単純労働は別として能力がつりあわないからだ。
企業は「高齢者の雇用」「働き方改革」と生産性の両立に悩んでいる
会社にとっては卵を産み続ける鶏は良い鶏だからいくらでも欲しいが、卵を産まなくなった鶏を何羽鶏舎に飼ったところで会社の利益はあがらないということになる。年金制度の維持が厳しくなるほど、国は高齢者の雇用を企業に押し付けようとしている。年金支給開始年齢はやがて65歳から70歳、あるいはそれ以上に延長されることも視野に入れざるを得ない状況が見え始めている。
4月から、働き方改革関連法案が施行される。大企業は雇用者の残業時間に制限がかけられ、有給休暇の消化、2020年には同一労働同一賃金が義務化される中で、彼らの労働生産性をあげていかなければ、収益を確保していくことはできない。
会社は、労働生産性をあげていく努力が求められるいっぽうで、卵を産まなくなった大量の高齢者を今後もさらに長期間にわたって雇い続けなければならないという苦難の運営を強いられることになるのだ。国内だけでなく世界中にライバルがひしめき合い、その中で戦っていかなければならない会社にとっては雇用の継続は大きな重荷になっている。