文春オンライン

『だから私は推しました』脚本家・森下佳子が語る「地下アイドルの“危うさと美しさ”」

脚本家・森下佳子さんインタビュー #1

note

森下 アイドルとファンの距離感というのは本当に難しい問題で、まず前提として思ったのは「現実にこの問題と戦っている人がいる。そうした人を馬鹿にするような描き方は絶対にしたくない」ということでした。その上で、実際こうなったときに寄り添える、できる範疇はどこまでだろうと。

――ドラマの中で、愛はハナから瓜田勝(笠原秀幸)の話を聞きますが、最初は「面倒くさいことに足突っ込んじゃった」と、距離を置こうとしたのが印象的でした。

瓜田勝(笠原秀幸さん)はハナのチェキ券を買い占め、洗濯機までプレゼントする ©NHK

主人公にはあなたでも私でもあり得る存在でいてほしい

森下 愛という人間には、あなたでも私でもあり得る存在でいてほしいんです。そう考えたときに、やっぱり自分がストーカーまがいの問題に関わるというのは、端的に言ってすごく怖いんですよ。どうしていいかもわからない。ハナちゃんがこれだけ困っていると聞いてしまったら、なんとかしてあげたいけど、ああ、でも正直なんで聞いちゃったんだろう……という気持ちが出てくるのも、リアルなところだと思います。

ADVERTISEMENT

 

――確かにあそこで「私が解決してあげる」と言ってしまっては、嘘っぽくなりますよね。

森下 嘘っぽいし、たぶんそんなことはできないですよね。実はここはスタッフ含め、みんなでかなり考えたんです。たとえば法的な手段もとれなくはないけど、それで逆上されてしまったら危ない。やっぱり24時間、誰かがついていてくれるわけではないので。だから相手を突っつくというのは、結構怖いことだな、と。そんな風に「愛ちゃんにできることはなんだろう?」と考えていった結果、あのようなシーンになりました。