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「ドラマファンがオタクと呼ばれる時代が来る」“朝ドラ脚本家”森下佳子を突き動かす危機感

脚本家・森下佳子さんインタビュー #2

 向田邦子賞、橋田賞、ザテレビジョンドラマアカデミー賞など、数々の脚本賞を受賞している森下佳子さんにとって、今回の『だから私は推しました』(NHK)は、意外にも初めて手掛ける深夜ドラマになる。若い世代に向けて挑戦的な物語を作り続けている「よるドラ」に飛び込んだ理由の一つとして、森下さんはこの業界の未来に対する“ある危機感”を挙げた。ドラマ界のトップランナーには、果たしてどんな10年後が見えているのか?

(全3回の2回目/#1より続く)

◆◆◆

――森下さんにとって、NHKでの連続ドラマは、「朝ドラ」の『ごちそうさん』(2013年度下半期)、大河ドラマの『おんな城主 直虎』(2017年)と来て、今回の「よるドラ」になります。くくりとしては深夜ドラマになると思いますが、今のタイミングでここに挑戦された理由というのは何かあるんでしょうか?

深夜ドラマだからこそできることがある

森下 私はこれまで、深夜ドラマはやったことがなかったんです。ちょっと関わったことはあるんですが、自分で書いたことはまだなくて。なのでやってみたいな、と思ったというのがまずあります。それにいま、深夜だからできるいい企画というのが、すごく増えてきていませんか?

 

――たとえばどんな作品でしょうか?

森下 最近だと『きのう何食べた?』(テレビ東京)なんて良かったですよね。でも、あれをゴールデンに持っていったら、やっぱり違う気がするんです。深夜にあのサイズ感のドラマを、西島秀俊さんと内野聖陽さんという、しっかりした俳優さんでやるから面白い。深夜にもってきたからこそはまる話、できる話があるよね、というのが、ここのところ価値観としても出てきているんじゃないかと感じています。

――この「よるドラ」の枠は、これまで『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』や『腐女子、うっかりゲイに告る』といった、若い世代をターゲットにした挑戦的なドラマを放送してきました。その枠で脚本を、と最初にオファーが来たときはどう思われましたか?

 

「自意識」をテーマに書くという挑戦

森下 そんな若い人たちのところに私が出ていくのはどうなんだろうな、という気持ちもありましたが、「ゾンビ」とか「腐女子」とか先行するドラマについても、切り口を聞いて面白いなぁと思ったので、そういうことをこの歳になってやらせてもらえるのはすごくありがたい、と。あと、「自意識」をテーマにドラマを書くというのを、これまであまりやってこなかったな、とも思いました。もちろん、自意識というのはどんなドラマを書くときにも絡んでくるんですが……。

――今回で言えば、承認欲求というような?

森下 そうですね。そういったものをすくい取って、正面からぶつかったことがなかったな、と思ったんです。で、下手をすると、このままもうぶつからずに行くんじゃないかと。たとえばこれから先、また時代モノをやりませんかとか、家族モノをやりませんかとか、そういうオファーはあるかもしれないけど、今回のようなオファーってもうないんじゃないかなって思ったんですよ。だからすごくありがたいなと。