これだけスマホをいじる主人公は初めて
――確かに今回のドラマを観ていて思ったのですが、森下さんの作品の中で、これだけスマホをいじる主人公というのは珍しいですよね。
森下 これまではいないですね。
――ドラマの時代設定もあるとは思うんですが。
森下 私の場合、30代~40代ぐらいの平成の間、ほとんど作品では平成にいなかったんです。昭和にいたりとか、戦国時代にいたりとか、江戸時代だったり、あとは大正とか明治にいたりしたので、そもそもスマホが存在してなかったんですよ。脚本に初めてスマホって書いたのが、『わたしを離さないで』(TBS)だったと思います。でもあれは一種のパラレルワールドだし。どう思います、これ?(笑)
――そういった点でも、今回は新しい挑戦だったんですね(笑)。ところで脚本のオファーが来る時点では、どのくらいの設定まで決まっているものなんでしょうか?
森下 今回私が受け取ったミッションは、地下アイドルとOLが出会って変わっていく、その物語の脚本を書いてくださいというものでした。前回もお話ししましたが、「どう変わっていくか」は、そこからスタッフさんと話し合って決めていきます。
10年後、いまの若い人たちはテレビの前にいるのか?
――今回、「承認欲求」というテーマと向き合われてどうでしたか?
森下 そうですね……。承認欲求のようなものに取り憑かれている人がいたときに、たとえば「もう気にしなければいいじゃん」という、すごく簡単な理屈がありますよね。でも、気持ちさえ切り替えればいいのかと言えば、それもなかなか無理な話で。じゃあ、それを気にしなくなるのってどういうときなのかと考えると、やっぱり何かに打ち込んでいるときなんじゃないかなぁ、と。それは何でもいいんですよ。仕事でもいいし、趣味でもいいし、何でもいいんだけれど、何かに打ち込んでいるときは、確かに気にしないよね、というのが実感としてあって。それが、今回の主人公である遠藤愛(桜井ユキ)の場合はアイドルだった。
――そうした非常に現代的な問題を扱っているのは、やはり「よるドラ」が意識的に若い世代をターゲットにしている、というのと関係しているわけですよね。
森下 「よるドラ」というのは、10年後、いまの若い人たちがテレビの前からいなくなってしまうのではないか、という危機感の下に、NHKが作った枠でもあるんです。
――そうした、若い世代にも観てもらえるドラマを作らなければ、という意識は森下さんの中にもあったんでしょうか?