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「失言防止マニュアル」のお手本

 ここで思い出したいのが自民党の“失言防止マニュアル”である。

「失言相次ぐ自民、防止マニュアル配布 幹部『あきれる』」(朝日新聞デジタル5月22日)

 所属議員の失言が止まらない自民党が「失言防止マニュアル」を議員に配ったという話題。

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 このなかで具体的に挙げられたのは、

(1)歴史認識、政治信条
(2)ジェンダー(性差)・LGBT
(3)事故や災害
(4)病気や老い
(5)身内と話すような、ウケも狙える雑談口調

 である。

©文藝春秋

 しかしこの5点、特に(1)と(2)は政治家がどう考えているか知りたいことである。つまりこれは失言防止というより「大事なことは言わないでおこうね」という目くばせにしか思えなかった。

 ここでハッとしないだろうか。

 小泉進次郎はこの「価値の問題」について見事に「明言を避けている」ではないか。

 これが小泉進次郎という政治家なのだ。進次郎が「失言防止マニュアル」のお手本なのである。そつがない。

「僕もびっくりしてつい立っちゃった」 

 このエピソードも触れておきたい。

 3年前に「演説中の安倍首相の呼びかけで自民議員が一斉に起立・拍手」という件があった。
「所信表明演説 起立拍手、尾を引く 野党『違和感ある』」(毎日新聞2016年10月1日)

 あのとき小泉進次郎はマスコミの前で「あれはない。ちょっとおかしいと思いますよ。自然じゃない」とコメントした。しかし驚いたのは次の言葉だった。

「僕もびっくりしてつい立っちゃった」。

 ズルい。ズルすぎる。

 テレビカメラの前では「あれはおかしい」と批判してみせるが、実際の現場では自分も起立していたのだ。「びっくりしてつい立っちゃった」ってなんだよ。

 それまで成功していた進次郎のそつのなさ、いや、狡猾さが露骨に見えたのである。

首相官邸で、囲み取材を受ける2人 ©時事通信社

 私が「ほんとうは怖い小泉進次郎」と書いたのは「そろそろ何を信じているのか教えてほしい」という不安もあったからだ。

 将来の首相候補らしいのにどういう政治家かよくわからない。本人がこの状態を利用したまま進むのは怖いし、ズルい。今まで信念のようにみえたものは「永田町を堅実に歩きつつ、世間の空気をうかがいながら歩くこと」らしいことはわかる。

 それもいいがそろそろ「大事なこと」も言ってほしい。

 さていろいろ書いてきましたが、小泉進次郎さん、滝川クリステルさん、ご結婚おめでとうございます。