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俳優が歌う流れを作った「カルテット」

 ドラマの主題歌を主役ひとりが歌うより、主役が所属するグループが歌うことで、ドラマと一定の距離が取れる。これが、登場人物名義だと企画感があって話題にはなる。一方、主人公と主題歌がまとまってしまうと、主演のプロモーション映像的なイメージができて、主演以外の視聴者が置き去りにされる不安もややある。

「あなたの番です 反撃編」は田中圭が亡き妻を思って泣くときに主題歌がかかることがコーナー視されていて、それはそれでお楽しみなのだが、田中圭の圧倒的な叙情性とコメディのハイブリッドで大成功した「おっさんずラブ」のように作品として昇華できるか、おもしろコーナーで終わるか注目したい。

異例の2クールドラマ「あなたの番です」で主演中の田中圭 ©AFLO

 ジャニーズの場合は圧倒的にファンが多く、彼らのスターのポテンシャルありきで制作されたドラマが多数なので、主役と主題歌のオールインワンで全然良かったのだ。ところが、昨今、ジャニーズではない俳優たちが続々歌いはじめた。

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 この流れの最初は、配信だった。2017年、1月期の「カルテット」(TBS系)で共演する松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平がドラマ限定ユニット・Doughnuts Holeとして主題歌「おとなの掟」のフルバージョンの配信を行った。その後、夏のドラマ「僕たちがやりました」(フジテレビ系)では、窪田正孝、間宮祥太朗、葉山奨之、今野浩喜が「DISH//と凡下高がやりました」として主題歌を歌って配信。ちなみに主題歌担当のDISH// (ディッシュ)は窪田正孝と同じ事務所の北村匠海が所属している。

新時代の“主題歌男子“の先駆けはディーン・フジオカだった

 その後、ディーン・フジオカが「今からあなたを脅迫します」(17年 日本テレビ系)、「モンテ・クリスト伯——華麗なる復讐——」(18年 フジテレビ系)と主演と主題歌のワンパッケージ化を続けざまに行う。かれこそ最近の主題歌男子の先駆けといってもいいだろう。これで、いけるぞ、と業界が踏んだのか、その後、高橋一生、田中圭、三浦春馬と続々、配信企画でなく、しっかり主題歌を歌い出した。ドラマの感情を増幅できることや話題性にもなるとはいえ、どれも、かつての織田裕二や反町隆史時代のように高視聴率ドラマではないので、小商い感が拭えない。いま、視聴率のとりにくいドラマはこういう小商い(グッズなどを売る)に力を入れるしかなく、その点では人気俳優と歌というパッケージは正解であろう。

“主題歌男子”の先駆け ディーンフジオカ ©文藝春秋