問題視すべきなのは年に1度の「24時間テレビ」なのか?
ここまで「24時間テレビ」や“感動ポルノ”の是非について論じてきた。しかし、テレビにおける障害者の描かれ方ということに関して言えば、わたしたちは年に1度しか放映されない「24時間テレビ」ではなく、障害がテーマでない場面では、そもそも障害者がほとんどテレビに登場しないことを問題視すべきなのではないか。
たとえば、テレビ局の「顔」とも言えるテレビアナウンサーに障害者が非常に少ないということは、ほぼ間違いなく言えるだろう。外見から分かる障害ばかりではないとはいえ、身体障害者の国民に占める割合が3.4% 、民間企業における障害者の法定雇用率が2.2%であることなどを考えると、体感的にはそれより圧倒的に少ない。
もちろん、「アナウンサーに障害者が少ない」というのが単なる私の思い込みである可能性も十分ある。そこで、文春オンラインを通じて、NHK及び民放キー局に、障害を持つアナウンサーの雇用状況を問い合わせた(質問状は文末に記載)。その結果は以下の通りである。
<NHK>
障がい者の職種ごとの在籍の有無、具体的な人数、障がいの内容などについては、お答えしていません。
<日本テレビ>
社員のプライバシーに関する事柄に関してはお答えしておりません。
<テレビ朝日>
プライバシーにかかわることなのでお答えを控えます。
<TBSテレビ>
プライバシーに関わることでもあり、個別部署での在籍等は、お答えしておりません。
なお、当社では、採用にあたって障がいの有無で判断することはありません。
<テレビ東京>
個人のプライバシーに関わることであり、お答えは控えさせていただきます。
<フジテレビジョン>
個人のプライバシーに関わる質問ですのでお答えできません。
ある程度想定していたことではあるが、具体的な回答が得られなかったことは極めて残念である。
文春オンラインが独自に調べた範囲では、アナウンサーとキャスターは厳密には異なるものの、NHKには少なくとも5人の聴覚障害を持つキャスターが在籍していることが分かった。また、NHKは1990年に新設された番組「
しかし、これ以外に障害を持つアナウンサーの存在はどの局でも確認できなかった。ある意味で局の「顔」ともいえるアナウンサー職に障害者を採用する取り組みは、NHKでしか実現していないようだ。
公共放送でさえ、障害を持つアナウンサーは福祉番組のみ
そして、そのNHKでさえ、福祉に関連する番組内容でしか障害を持つアナウンサーを採用していない。こうした状況は若干寂しいと言わざるを得ない。私たち障害者は「理由なく」存在するのだから、福祉番組であるといった文脈とは関係なく、「理由なく」テレビに登場してもいいのではないか。
たとえば、BBCでは、子供向けチャンネル「CBeebies」で2009年から2017年の間、先天性四肢欠損のケリー・バーネルをアナウンサーとして起用。同じくBBCで、先天性四肢欠損のルーシー・マーチンが2015年から天気キャスターとして活躍している。