日本でも同じようなことが起こる?
CA社が使ったような性格プロファイリングは政界に広まりつつある。CA社残党は中東やアフリカ、トランプ陣営に散らばった。アメリカ民主党も独自のプロファイリング・システムを開発中だと報じられている。また、韓国では、30ものアプリを介してユーザー情報を収集し他企業に提供する「第二のケンブリッジ・アナリティカ」企業RankwaveがFacebookに提訴された。
近い将来、日本でも同じようなことが起こるのではないだろうか?『グレート・ハック』を観たあとでは考えずにいられない視聴者もいたはずだ。
ソーシャルメディアをうまく使えば、「真面目な活動家」を装って政敵の支持層を分散させたり、過激な政治運動をでっち上げたりすることもできる(これらはアメリカ大統領選挙においてロシア機関が行なったとされる戦略だ)。CA社が使ったようなパーソナライズド戦略を用いれば、SNS上のターゲティング広告により、大衆の見えない場所で、過激な主張をする候補が熱狂的な支持者層を獲得できるような場合もあるかもしれない。クレジットが無いコンテンツの場合、追跡と検証も難しい。
人間の愚かさを侮ってはいけない
こうした問題の対策としては、法律のアップデートが求められており、ユーザーデータ運用の開示を義務づける「データ権利」運動も活性化している。一個人としても、SNSやアプリのセキュリティ情報をいま一度確認したほうが良いだろう。一方、「テクノロジー進化により独裁が効率的になりつつある」と警鐘を鳴らす『サピエンス全史』著者ユヴァル・ノア・ハラリは、少々哲学的な助言を呈した。
「自分はつけ込まれる脆弱な存在だという自覚を持つべきです。私たち人間の愚かさを侮ってはいけません」
進化したアルゴリズムが人間の感情や情動のみならず未来の行動までコントロールする時代……それが到来するかはわからないが、気をつけるに越したことはない。